ルイス・フォン・アン氏は、人間とコンピュータが協調して問題を解く「ヒューマンコンピュテーション」で事業を興す連続起業家(シリアルアントレプレナー)だ。
アン氏は、ヒューマンコンピュテーションを応用して、過去の書籍を正確にデジタル化するプロジェクト「reCAPTCHA」の創業者として知られる。このエピソードを語ったTEDトークは、今も人気が高い(TEDへのリンク、ITpro関連記事)
元々アン氏は、Webサービスへの不正登録を防ぐ技術「CAPTCHA」の開発者だった。ユーザーはWebサービスへの会員登録のため、ブラウザーに表示された「歪んだ文字」を読み解き、入力する。
歪んだ文字を読む、という非生産的な営みを、意味のある営みに変えられないか・・・そう考えたアン氏が思いついたのが、ヒューマンコンピューテーションの考え方をCAPTCHAに応用する「reCAPTCHA」のアイデアだった。
reCAPTCHAでは、CAPTCHAで表示する文字の一部を、ランダムな単語ではなく「過去の書籍のうち、OCRの自動読み取りでは読み取れない文字」に置き換える。ユーザーは、歪んだ文字を読み解いて入力するうちに、「過去の膨大な書籍をデジタル化する」というプロジェクトに知らずに参加しているわけだ。アン氏は卓抜したアイデアで、無駄の多い営みを、人類に役立つ一大プロジェクトに変貌させた。
そして今、アン氏が注力しているのが、このヒューマンコンピュテーションの考えを語学学習に応用するプロジェクト「Duolingo」である。Duolingoの利用者は、無料で言語を学習できる代わりに、例えば英文をスペイン語に翻訳する問題を解きながら「英語のWebコンテンツをスペイン語に翻訳する」作業に参加する。今では世界全体で約3000万人ほどのユーザーを獲得した。