今年3月下旬に米国トップクラスのビジネススクール、ハーバード大学経営大学院の教授陣18人が来日。教材や論文の作成に役立てる目的で、複数の日本企業の現場を視察し、経営者に会って話を聞いた。
この一団に加わって来日したジョン・クエルチ教授は、マーケティング研究の権威の1人。同教授に、日本の小売業や消費者向け商品のメーカーが現在、期待をもって高い関心を寄せる「ビッグデータ」についての見解を聞いた。
現在、日本の多くの企業が、いわゆる「ビッグデータ」をいかに有効に利用するかということに強い関心を寄せています。なぜなら、ビッグデータの有効利用が、人々に消費を促す強力な手段だと受け止めているからです。
クエルチ:そうですか。私は「ビッグデータはビッグプロブレムだ」と見ています。というのも多くの企業が、ビッグデータの解析を消費者を深く理解することの“代用品”として使おうとしているからです。
ですがデータの解析は、消費者と直接話すことや、消費者が製品を使用したりサービスを利用したりする様子を観察することの代用品にはなり得ません。コンピューターのスクリーンに向かってビッグデータを解析しても、優れたマーケターにはなれない。依然としてオフィスの外に出て消費の現場を歩き、消費者の息吹を感じることが必要です。これが私が強調したい1点目です。
ビッグデータへの投資が浪費に終わる理由
2点目として指摘したいのは、多くの企業が収益性を高めるためにビッグデータを活用しようと莫大な資金を投じていますが、それらが浪費に終わっているということです。
こうした事態を招く最大の理由は、マーケティングに従事する人たちとIT(情報技術)に携わる人たちは通常、異なるマインドセット(物の見方)を持っていることにあります。
どういうことでしょうか?