米Marvell Technology Groupが2014年3月7日に米国・オースチンで開催されたSXSWで発表した「Kinoma Create」は、ハードウエアに詳しくないソフトウエア技術者でも、気軽にインターネットに接続したデバイス(IoT)を開発できるツールとして関心が高まっている。同日発表したクラウドファンディングによる早期体験者募集は、10日間で3万ドルを集めたほどだ。このプロジェクトを主導するピーター・ハディ氏は、米Appleの「QuickTime」の開発者として知られる。

写真1●Kinoma Createの外観
写真1●Kinoma Createの外観
上部のスペースはセンサーを配置できる。スリットの奥に端子がある。本体左側面にUSB端子や、センサーケーブルを取り出すための穴がある
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 インタビューに入る前に、Kinoma Createの概要をまとめておこう。Kinoma Createはジャンルとしては「Raspberry Pi」や「Arudino」など、個人でも使えるプロトタイプ開発向けの小型マイコンに属するが、ボード単体ではなくケースに収納されている(写真1)。各種インターフェースを接続するためのコネクターがあり、ケーブルを配置するための穴も確保されている。320×240ドットのタッチセンサー付き液晶ディスプレイを備えているので、単体のコンピューターとしても使用可能だ。通信機能としてIEEE801.11b/g/n対応の無線LANや、Bluetooth、USB端子などを備える(表1)。

表1●Kinoma Createの主な仕様
機能規格
CPUARMv5コア、800MHz動作(Marvell Aspenに基づくSoC)
ディスプレイ320×240ドット、静電容量式タッチスクリーン付き
無線LANIEEE802.11b/g/n
USBUSB 2.0、OTG対応
メモリー128MバイトRAM、16MBフラッシュ
拡張カードmicroSDカードスロット
音声入出力スピーカーおよびマイク
電池駆動時間4時間を目標、USB給電で動作可能
入出力端子デジタルI/O×23~36(設定で変更可)、アナログ入力0~16 (設定で変更可)、I2C、UART、PWM
正式発売時期2014年第4四半期
価格149ドル

 JavaScriptとXMLでアプリケーションを記述できるLinuxベースのOSを搭載していてる点が、今までのプロトタイプ向けハードウエアとの違いだ。ピーター・ハディ氏にKinoma Createについて聞いた。

(聞き手は北郷 達郎=日経NETWORK


Marvell Technology Group Kinoma Vice President ピーター・ハディ氏
Marvell Technology Group Kinoma Vice President ピーター・ハディ氏

まずKinoma Createの思想的な背景というか、コンセプトを説明してほしい。

 ハードウエアで何かを作るには、実際に動作するプロトタイプ作成が必要だ。Raspberry Piや「BeagleBone」のようなハードウエアもいいが、実際に「やりたい」と思ったときに必要なものが揃っていない。Kinoma Createは最初からOSがインストール済みで、やりたいと思ったらすぐに作成にとりかかれる。