各種データの活用が注目を浴びるなか、テキストデータの活用は、数値データに比べて難しいとされる。データを構造化してデータベース化することが困難なうえ、個別の言語に特有な文脈の解析技術などが必要となるためだ。

 文脈を解析する技術などを備えたテキストマイニングツール「VextMiner」を手がけるベクストの石井哲社長によれば、実際の商談で企業が活用に取り組んでいるのは、コールセンターなどでの顧客との会話を音声認識エンジンで自動的にテキスト化したデータだという。ソーシャルメディアから得られるテキストデータの活用法の確立はまだ途上段階にあると見る。以前ITproでテキスト分析をテーマに連載を執筆したこともある同氏に活用動向を聞いた(関連記事)。

(聞き手は井上 健太郎=コンピュータ・ネットワーク局)


ビッグデータブームの中で、ソーシャルメディアから得られるテキストデータの活用がよく話題に上ります。ベクストには、そのような相談はユーザーから来ますか。

写真●テキストマイニングツール「VextMiner」を手がけるベクストの石井哲社長
[画像のクリックで拡大表示]

 当社ユーザーの中に、実際に、ソーシャルメディアから得られるテキストデータがどう役立つのか、3年がかりで検証している大手自動車メーカーがあります。分析技術面でもまだ課題がありますし、ソーシャルメディアのデータ活用をものにするうえで、長期的な検証の取り組みは、避けては通れないという印象を持っています。実際の商談では、コールセンターに入る顧客の声をもっときちんと分析したいという相談の方が多いですね。

 どんなソースであれ、テキストデータを分析する際には、ただの挨拶や冗長な表現など必要のないデータを取り除くという工程が不可欠です。特に、ソーシャルメディア上のやり取りのデータでは、それが課題となります(関連記事)。不要なデータが大量に含まれているので、効率的に排除するのに高度な技術やツール活用の工夫が必要になるのです。

 ソーシャルメディアのデータが役に立つかどうかは、業種や業態によっても大きく異なります。例えば、どのようなときに役立つ発言が多く集まるのか、という事情の違いがあります。自動車業界にはモーターショーという大きなイベントがあり、このとき活発に感想がソーシャルメディアに書き込まれるので、有益なデータが多く集まるようです。このイベントへの感想に着目して、プロモーションの有効性を検証するのは非常に効果的です。

 しかし違う業種のユーザーは、どのようなときのソーシャルメッセージ上の発言を重視するのか、そもそも分析したくなるような発言が多いのかどうか、個別に調査しなければならないでしょう。例えば、化粧品メーカーではソーシャルメディアのデータを役立てる方法があるかもしれませんが、銀行が活用するのはちょっと難しいのではないでしょうか。

 さらに、消費者の反応が分かったあとで、どういうアクションを取るのかということをあらかじめ想定してから分析しなければなりません。アクションにつなげられない分析をしても意味がありませんから。この点からも企業ごとに、データ活用の目的はかなり異なったものになると思いますし、ユーザーによる活用のセンスの差が出ます。こういうところも、実際にツールを使って分析しながら考えなければ見えてこないのではないかと思います。

 

ソーシャルメディアのテキストデータは、プロモーションの有効性判定のほか、商品の品質問題や評判低下の予兆発見に役立てられるという見方もあります。その点ではどうですか。

 これも業種業態によって、トラブルの発生サイクルの違いなどがありますので、活用してどのくらい役立つかどうかは、一概には言えないのです。

 ソーシャルメディアを分析するよりも、各企業のコールセンターに飛び込んでくる声を、音声認識エンジンですべてテキストデータ化しながら、もっと正確に分析する取り組みの方が、成果が出ていますし、引き合いも多くなっています。