「納品のない受託開発」。そんな新たな事業モデルを掲げているのがソニックガーデンの倉貫義人社長だ。月額固定制の料金で、オーダーメイドのシステムをクラウド上に構築する。「技術者が生き生きと働ける」というこのモデルの勘所について、倉貫氏に聞いた。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ


「納品のない受託開発」とはどのようなものでしょうか。要件定義、開発、テスト、納品という従来のSIモデルと異なる点は何でしょうか。

ソニックガーデン 代表取締役社長 CEO 倉貫 義人氏
ソニックガーデン 代表取締役社長 CEO 倉貫 義人氏
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 そもそもシステム開発に要件定義が必要、というのは、ITベンダーの理屈でしかありません。ユーザー企業から、要件定義以上の仕事を押しつけられるのを防ぐための作業です。システムの「納品」を前提にするから、納品物の見積もりが必要になり、そのために要件定義を行っています。

 ソニックガーデンのビジネスモデルは、要件定義は行いません。月額定額で、IT技術者1~3人をアサインします。ただし、提供するのは技術者の時間ではなく、その成果です。事業モデルとしては、経営コンサルティングや顧問弁護士などプロフェッショナルサービスに近いと思います。ただ単に技術者の時間を売るだけでは、従来のSES(システムエンジニアリングサービス)契約と同じになってしまいます。

 システムを運用するITインフラには、原則として外部のクラウドを使い、我々が開発・構築・運用まで一括で手掛けます。顧客がシステムを保有するオンプレミス型では「納品」になってしまいますから。顧客には「どのような技術、インフラを使っているか」を意識させず、あくまで我々が決めたサービスレベルに沿って運用します。