国内市場の飽和が鮮明となってきた通信業界。クラウドやセキュリティ関連企業の相次ぐ買収攻勢で海外展開を急ぐNTTグループだが、国内市場の将来についてはどう考えているのだろうか。規制の問題を含め、鵜浦社長に今後の方針を聞いた。

(聞き手は加藤 雅浩=日経コミュニケーション編集長)

2014年3月期中間決算の説明会で、「イノベーションとコラボレーションが進む通信政策が必要」と話していたが、意図を知りたい。

鵜浦 博夫氏(Hiroo Unoura)
鵜浦 博夫氏(Hiroo Unoura)
1949年生まれ。石川県出身。1973年に東京大学法学部を卒業し、日本電信電話公社(現NTT)に入社。2000年東日本電信電話(NTT東日本)東京支店副支店長、2002年NTT取締役第一部門長、2007年常務取締役経営企画部門長中期経営戦略推進室次長兼務などを経て、2008年6月に代表取締役副社長新ビジネス推進室長に就任。2012年6月に代表取締役社長(現職)。趣味は野球観戦(プロ野球では西武ライオンズのファン)、囲碁など。
(写真:新関 雅士)

 これまでバリューパートナーを目指すと説明してきたが、それを具体化した。この背景には、通信会社のビジネスモデルが大きな節目を迎えていることがある。

 従来は設備に先行投資して回収、それを再び投資する繰り返しだったが、このビジネスモデルはもう崩れかけている。固定も移動もユーザーへの普及は一巡し、通信量だけが増えていく時代に入った。昔であれば従量制で通信量の拡大とともに収益が伸びたが、今は定額制が中心で通信量が増えても収益はリニアに伸びない。固定の音声伝送のように収益が減少している領域もある。

 一方、通信設備とサービスを分離する動きも進んでいる。代表例が音声通話で、様々なプレーヤーが個別に通話アプリの提供を始めた。コミュニケーション手段も音声通話だけでなく、メッセージアプリの登場などで多様化している。かつては通信会社がコミュニケーション分野のメインプレーヤーだったが、今やワンオブゼム。多数のプレーヤーの中の一社にすぎなくなった。

 飽和状態のBtoCのビジネスに固執していては駄目で、ICT(情報通信技術)を活用して他社のBtoCを支援する「BtoBtoC」のビジネスを広げていく必要がある。顧客企業の売り上げや利益の拡大、海外展開の支援まで踏み込んで提案していかなければ、もはや成長を維持できない。旧来のビジネスモデルが崩れかけている状況は他の業界も同じ。様々なプレーヤーと組んで新しいビジネスモデルを構築していくことが重要と考えている。