今日はパーソナルデータのビッグデータ活用についてお話を伺います。JR東日本の「Suica(スイカ)」の乗降履歴の販売問題ですが、消費者が過敏すぎるのか、それともJRや日立製作所がいけなかったのか、まだなんとなく釈然としないところがあるんです。

野原:まず事実をさらっておきましょう。6月27日に日立製作所がスイカデータをJR東日本から購入して、それに基づいて日立交通系ICカード情報提供サービスというのを7月から開始すると発表しました。それを知った人々から、JR東日本に苦情や問い合わせが約150件入ったというのが発端です。JRがそれを公表し、それまでの顛末が7月25日に記事になりました。
かなり批判的にメディアに取り上げられましたよね。
野原:私は、メディアが煽りすぎなのではないかと思います。日立に販売された情報は個人情報を取り除いてあり、完全にアノニマス化(匿名化)されたもので、個人情報とは言えません。たとえば朝日新聞の見出しは、「スイカ履歴をJR東が販売、利用者に事前説明なし」。間違ったことは書いてないのですが、事前説明をしなかったことが違法だと思わせるようなバイアスがかかっていると思います。
1カ月間批判に答えなかった
私は問題は3つあったと思います。まずJRや日立は、事前にそういう情報の販売をすることを周知しておけばよかった。2つ目はスイカの利用者がデータの2次利用を拒否できる「オプトアウト」の仕組みを作っておくべきだった。これは批判されて後から導入しましたね。最後で最大のミスは、サービス公表から、記事になるまでの1カ月間、個人のブログやツイッターでたくさんの意見が出されていたのに、それに対してなにも行動を起こさなかったということです。