米Parallels(パラレルス)は、クラウド運用基盤(「Parallels Automation」など)とクロスプラットフォーム基盤(「Parallels Desktop for Mac」など)を両軸とするソフトウエアベンダーである。現在では、企業へのMacの浸透に合わせ、クロスプラットフォーム基盤に注目が集まっているという。ITproは、クロスプラットフォーム事業の動向について、同社幹部に聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


クロスプラットフォーム基盤ソフトとは何か。

米Parallelsでクロスプラットフォーム事業担当プレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるJack Zubarev(ジャック・ズバレフ)氏
米Parallelsでクロスプラットフォーム事業担当プレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるJack Zubarev(ジャック・ズバレフ)氏

 Macユーザーに対してWindowsの利用環境を提供するソフトだ。これによるメリットは、エンタープライズ(企業ユース)でもMacが使えるようになることだ。

 ソフトの性質上、Macを使うつもりがない企業にとっては必要のないソフト。この点については、そもそもWindowsからMacへ移行することを推奨している。Windowsマシンを素で使うよりも、Mac上でWindowsを動作させた方が良いとアピールしている。

 従来、Macはコンシューマー分野や教育分野では使われてきたが、企業では使われてこなかった。この状況が年々変わってきた。フォーチュン500企業全体で見ても、まだメジャーとは言えないが、“大規模なマイノリティー”となっている。

どんなソフトを提供しているのか。

 三つのソフトを提供している。

 (1)「Parallels Desktop for Mac」は、Windowsを導入した仮想マシンをMac上で動作させるソフトだ。競合製品は、米VMwareの仮想マシンソフト「VMware Fusion」だ。市場シェアで言うと、Parallels Desktopが90%、残りがVMware Fusionだ。

 MacはもともとOSのデュアルブート機能(Boot Camp)を備えており、Mac OSだけでなくWindowsをブートすることもできる。しかし、デュアルブート環境においては、OSを切り替えようとしたらOSをブートし直さなければならない。瞬時にOSを切り替えることはできない。

 Parallels Desktopは仮想マシンソフトであるため、ホストOSであるMac OSを動作させたまま、ゲストOSであるWindowsを動作させることができる。仮想マシン方式であるため、物理マシン(Mac)に対して仮想マシンをプロビジョニング(配備)するといった運用管理も容易に行える。

 2012年からは企業向けのエディション「Enterprise Edition」も提供している。

 (2)「Parallels Management Suite」は、Mac用のクライアント管理ソフトだ。Windows環境のシステム管理ソフト「Microsoft System Center」のプラグインを提供しており、Microsoft System CenterからMacを管理できる。Parallels Desktopと連携させると、仮想マシンの一括配備などもMicrosoft System Centerから実施できる。

 (3)「Parallels Access」は、MacやWindowsの画面をiPadでリモート操作するためのシンクライアント(画面情報端末)ソフトだ。画面情報端末のプロトコルは独自のもので、接続先となるMacやWindows側に専用のエージェントを導入して使う。

 Parallels Accessの最大の特徴は、デスクトップアプリケーションをiPadアプリケーションであるかのように利用できること。iPadのタッチパッド操作で、マウスポインター、左右のマウスクリック、文字の選択、ピンチイン/アウトによるフォントの拡大縮小などを可能にしている。