米シスコシステムズは2013年9月、最上位ルーターの新製品「Cisco Network Convergence System」(NCS)を発表した。スロット当たり5Tビット/秒、システム全体で1.2Pビット/秒(1P=1000T)のパケット転送性能を持つ。さらに高度なプログラマビリティを備え、SDN(Software Defined Networking)やNFV(Network Functions Virtualization)、そして同社が提唱する“次世代の次世代ネットワーク”「Evolved Programmable Network」(EPN)を実現する中核となる。同社は併せて、ワンチップで400Gビット/秒の処理を実現するネットワークプロセッサー「nPower X1」も開発した。これらを開発した背景や技術の詳細について、サービスプロバイダーネットワーキンググループ シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのスリヤ・パンディティ氏に聞いた。
まずNCSの概要を教えてほしい。
NCSの正式な名称は「Network Convergence System」(写真1)。「システム」と名前が付いているように、単体の製品ではなく、システムとして提供する。我々は、NCSを長期的に利用するプラットフォームと位置付けて開発した。
現在の製品は、1スロット当たり1Tビット/秒という性能を持っている。出荷している製品でこの性能を実現しているのは、当社だけだ。他社はまだ出荷できていない。将来的には、5Tビット/秒まで引き上げる予定だ。
NCSには、性能が異なる3タイプの製品がある。最上位のNCS 6000シリーズでは、近い将来にマルチシャーシ構成で1.2Pビット/秒(1P=1000T)の処理容量を実現する予定だ。
NCSの構成要素の中心となるのは、新たに開発したネットワークプロセッサー「nPower X1」(写真2)。シングルチップで400Gビット/秒を処理できる業界唯一のネットワークプロセッサーだ。これはNCSだけではなく、CRS-X(Cisco Carrier Routing System-X)にも搭載していく。
NCSを開発した背景は?
1つには、ネットワークのトラフィックが増大していることがある。特にビデオやモバイルのトラフィックが急激に増えているという状況が昨今続いている。ただ、これは以前からの傾向であり、新しい現象ではない。
もう1つは、マシン・ツー・マシン(M2M)、あるいはマシン・ツー・ピープルといった新しい通信形態が広がっていること。我々はこれを「Internet of Everything」(IoE)と呼んでいる。IoEでのトラフィックのタイプは従来と異なり、様々なイベントが発生する。このため、ルーターには転送容量に加えて、イベント処理性能といった新たなスケールが求められることになる。
こうした状況は、NCSを採用するサービスプロバイダーにとって何を意味するのか?
従来、サービスプロバイダーは自身を、トラフィックを伝送する事業者と捉えていた。そこで重要なのは「ビット・パー・セカンド」だった。しかし最近、サービスプロバイダーが展開するサービスは、ビデオ、ボイス、インターネット、モビリティなど多様化している。さらに今後は、スマートホーム、スマートカー、スマートオフィス、スマートインダストリーへと広がっていく。これらのサービスの中核はネットワークであり、それを所有しているサービスプロバイダーの収益機会とすることが可能となる。