「XPのサポートが終了するから新OSに切り替えなければならないという発想ではいけない」。日立製作所の荒井達郎 プラットフォーム販売推進本部ソリューションビジネス統括部部長はこう指摘する。「OSのサポート期限満了は、今後も定期的に訪れる。それを見据えて環境を整備することが、結果として不要なコストの発生を防ぐ」とみる。

(聞き手は吉田洋平=ITジャーナリスト)


2014年4月にWindows XPとOffice 2003のサポートが終了します。顧客企業の移行状況をどのように見ていますか。

写真●日立製作所 情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 事業統括本部 プラットフォーム販売推進本部 ソリューションビジネス統括部 部長 荒井達郎氏
写真●日立製作所 情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 事業統括本部 プラットフォーム販売推進本部 ソリューションビジネス統括部 部長 荒井達郎氏
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 業種別に大まかな傾向をお話しますと、金融や公共などの分野では着実に移行作業が進んでいます。一方で流通業や製造業の企業は遅れがちです。感覚的には半分くらいの顧客企業はサポート終了後もXPを搭載したパソコンが社内に残りそうな状況です。

 サポート終了後もXPパソコンを使い続けるであろう企業のうち、だいたい3分の1はできるだけ早くOSを切り替えようと考えていますが、残りの3分の2はすぐに切り替えるつもりがありません。こういった企業はサポート終了後もXPを使い続けるための手を考えています。

 2010年頃であれば移行に前向きな企業はもっと多かったのですが、東日本大震災以降の景気の悪化を受けて、移行をしばらく見送る決断をする企業が増えました。ただし、ここに来て消費増税が決まったので、「増税前に移行を済ませよう」という新たな需要が生まれつつあります。

各種公表値を見る限り、景況感は改善しています。それにもかかわらず「移行しない」と決めている企業は、どういった理由で判断したのでしょうか。

 OSやOffice自体を移行したくないという例はほとんどありません。しかし、Internet Explorer(IE)6用に作った社内のイントラネットを変更したくない、もしくは変更するとコストがかかり過ぎるといったケースが比較的に多いようです。自社開発したパソコン用のアプリケーションを手を加えることなく使い続けたいとの意向も強いものがあります。

 実は今回に限らず、サポートが切れたOSを使う選択肢を選ぶ企業はそれほど珍しくありません。ご存じの通り、すでにサポートが終了しているWindows 2000を現在も使い続けている企業は一定数います。そういった企業は、「インターネットに接続しない」「データはUSBメモリーを使って受け渡す」などの運用でセキュリティ面での問題を回避しています。

古いOSの脆弱性をつくウイルスにUSBメモリーが感染していたら、やはり危ない。

 ご指摘の通り、実際にUSBメモリーを介してウイルスに感染していまい、問題を終息させるまでに3カ月を要した事件も起きています。それをきっかけに移行を考える企業も少なくありません。

 ただ、XPに関しては、こなれてきたいくつかの技術を用いて運用面で工夫を凝らすことで、ある程度は問題を回避できると考えています。