企業がビジネスのグローバル化を加速するなか、世界中に散らばる拠点のシステム構築といった「グローバルプロジェクト」をいかに進めるかが課題として急浮上している。通常のプロジェクトに比べ、複数国の開発チームを率いる必要があるなど、乗り越えるべき課題は多い。

 金融機関におけるグローバルITプロジェクトなど、国境をまたいだプロジェクトのマネジメント経験を豊富に持ち、現在はプロジェクトマネジメント教育・コンサルティング会社の米ESIインターナショナルのシンガポール拠点のリージョナルディレクターを務めるラビ・サヒ氏に、グローバルプロジェクトを成功に導くためのポイントを聞いた。

(聞き手は岡部 一詩、田中 淳=日経コンピュータ


グローバルプロジェクトを成功に導くポイントは何か。

 私はシンガポールを拠点に、多くのグローバルプロジェクトを手掛けてきた。その経験から、複数の国にまたがるプロジェクトは非常に複雑だと言える。

 多くの企業はグローバルプロジェクトに対して、PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)やBABOK(Business Analysis Body of Knowledge)を使って対応しようとしている。しかし、プロジェクトマネジメントは詰まるところ、人に関わる仕事だ。文化の異なる人々をいかにまとめられるかが、グローバルプロジェクトにおけるカギになる。

メンバーを一堂に会して直接説明

 私が実際にプロジェクトに当たるときは、失敗のリスクを減らすために、各国のチームを3日間にわたって集合させる。そこで主に三つのことを実施する。

EISインターナショナルのラビ・サヒ リージョナルディレクター
EISインターナショナルのラビ・サヒ リージョナルディレクター
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 まず最初にするのが、ステークホルダー(利害関係者)の見極めだ。サブプロジェクトを担う全てのチームに会い、各チームがやろうとしていることは何か、逆に、するつもりがないことは何かを理解する。

 次に必要なことは調整作業だ。各チームが担うべき範囲について、きっちりと合意を得なければならない。

 最後に、各プロジェクトの関係性を見極める。そのために有用なのは、ワークショップを開催することだ。そこには二つの狙いがある。

 まず、グローバル全体における計画や、各プロジェクトとの関係性を確認する。プロジェクトはそれぞれ密接につながっており、一つのプロジェクトに変更が生じると、他のプロジェクトの計画を変更しなければならなくなる。サブプロジェクトを管理するのではなく、各プロジェクトの接点を取り持つのがプロジェクトマネジャーとしての私の役割だ。

 もう一つの狙いは、各チームメンバーの顔合わせだ。こちらの方がより重要になる。世界中に散らばるチームが再び会う機会はそうはないからだ。

 これらが、グローバルプロジェクトにおけるリスクを軽減する最良の方策だと考えている。