起業が盛んなシリコンバレーでは、現地のベンチャー・キャピタル(VC)であるYコンビネーターが生み出した「少額・多数」型の投資スタイルがこの数年注目を集めている。シリコンバレーに拠点を置き、最近日本の起業家向けに「スタートアップ・バイブル」を執筆したFenox Venture Capitalのアニス・ウッザマン氏に、Yコンビネーターがこの夏に実施したデモデイ(投資後数カ月の成果発表会)およびシリコンバレーの最新起業事情を聞いた。

(聞き手は菊池 隆裕=ITpro

ここ数年、勢いのあるベンチャー・キャピタルであるYコンビネーターのデモデイ(投資後数カ月の成果発表会)に、先日参加されたと聞きました。今回の様子はいかがでしたか

 米国では現在上映されている映画「スティーブ・ジョブズ」でジョブズ氏役を演じた俳優のアシュトン・カッチャー氏が来ていて、懇親会では長蛇の列ができていました。彼の講演が本人に似ているので、最近はいろいろなところから基調講演の依頼が来ているらしいですよ。

Fenox Venture Capitalのアニス・ウッザマン氏
Fenox Venture Capitalのアニス・ウッザマン氏
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 それはともかく、今回のデモデイには、全部で情報を公開済みの45社、現時点で非公開の3社、合計48社が参加しました。その中からTechCrunchが8社を取り上げていますが、私もこれらの会社のほとんどが面白いと思いました。その中でも特にいいと思った企業をいくつか紹介します。

 まずSpoonRocketです。10分以内で食事を届け、6ドルで販売するというビジネスモデルです。米国では、タクシー配車サービスのUberがはやっていますが、これを宅配の食事に応用したということで「ご飯のためのUber」、あるいは「ファーストフード2.0」をうたっています。もともとバークレイ大学の周辺で始めたビジネスですが、1年で200万ドルの資金を調達し、急成長を遂げています。

 次に紹介したいのがAmulyteです。米国でも年配者が増えていますが、緊急時に手助けを求めるための小型のデバイスを作りました。携帯電話あるいは無線LAN経由で伝える仕組みで、本体は149ドル、月額29ドルという利用料を徴収します。この市場は、米国だけでも100億ドルの市場と言われている巨大市場です。

 7Cups of Teaというのも面白いアイデアと思いました。悩みやストレスを抱えて我慢できない人は、精神病の医者を訪ねると思いますが、このサービスでは一般の人で「聞く力」のある人をマッチングするようにしました。悩みや愚痴を聞いてあげることで対価が得られますが、単に誰かのためになりたいという人も参加できます。

 これ以外で気になった会社は、Butter Systemsです。Googleの創設者であるセルゲイ・ブリン氏の弟が設立しました。レストラン向けにメニューをタブレットで見るためのシステムを作成しており、それといった特徴があるわけではありませんが、兄が役員に入っているということで、今後の成長性に注目しています。私も、デモデイの翌日に約束を取り付けて会ってきました。

 もう1件はPrimという企業です。洗濯物を自宅まで取りに来てくれて、送り返してくれるサービスを提供します。この企業の社長はスタンフォード大学を卒業しており、以前もYコンビネーターで別の企業を立ち上げました。