ソニーは、話題の“レンズスタイルカメラ”(DSC-QX100/QX10)の投入にあわせて、無線LAN経由でカメラを操作するためのAPIを公開するなど、開発者(デベロッパー)との連携活動を拡大している。これは、新しいUX(ユーザー体験)を、開発者と共に生み出していくという同社の方針の一環だ。同社のUX戦略を立案・推進するキーパーソン3人に、最新のUX戦略や開発者支援活動を聞いた(文中敬称略)。

(聞き手は菊池 隆裕=ITpro


IFA 2013(9月6日~11日にベルリンで開催された家電ショー)では、新たに発表したスマートフォン「Xperia Z1」を中心に、撮影体験の拡大に力を入れているように感じました(関連記事1関連記事2)。

写真1●ソニー UX・商品戦略・クリエイティブプラットフォーム UX・商品戦略本部 本部長 古海英之氏
写真1●ソニー UX・商品戦略・クリエイティブプラットフォーム UX・商品戦略本部 本部長 古海英之氏
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古海: 今回のIFAでは、Xperia Z1を発表し、撮影のエクスペリエンスを前面に押し出しました。Z1には、ソニーの最新技術に加え、撮影をより楽しくするアプリケーションが多数搭載されています。本格的なカメラ機能を求めるユーザーの皆さんにはレンズスタイルカメラ 「DSC-QX100/QX10」を用意しました。さらに、使い勝手をよくするために、NFC(Near Field Communication)によるワンタッチ機能を搭載しました。

 モバイル製品が中心的な存在であることは間違いありませんが、今回はちょうど主力機の投入タイミングがIFAに重ったということです。私たちとしては。製品カテゴリ別で考えるというよりも、打ち出したいUXがあって、それを象徴的に表現できる商品群とは何だろう、という順番で考えています。今回のUXを表現するキーワードとしては、「Create」を用いていました。

プレスカンファレンスの平井社長のスピーチでは、最新技術を投入すると同時に、ユーザーの要求を重視するとありました。今回の一連の発表の背景にある、ユーザーの要求とはどのようなものでしょうか。

古海: ご存知のように、スマートフォンをメインの撮影機材として使うケースが増えてきました。ユーザー調査によると、「もっと本格的なカメラ機能が欲しい」「暗いところでも撮影したい」といった声が多く聞かれます。スマートフォンでスナップショットを撮影するシーンを想定し、まずはソニーの技術でこれらの要求にこたえられるようにと考えました。

Z1に搭載された機能「Info-eye」では、カメラで撮影した画像をもとにネット検索し、被写体自体の情報やその関連情報を表示してくれます。カメラとネットが直結する世界は、全く違う体験だと感じました。

古海: 「これって何だろう?」と感じる興味や欲求に対して、ネットにつながっているからこそパッと出せる時代になっています。高精細・高画質の画を撮るのはもちろんですが、楽しみを広げる体験も実現しようと出したのがZ1です。例えば、AR(仮想現実感)機能では、ファインダー越しの風景と仮想世界のキャラクターが共存する体験を楽しめるようにしました。画質を高めていくのとは全く違う発想です。