カードサイズのPCボード「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」が注目を集めている。小型で安価ながら、Linux OSやプログラミング環境「Scratch(スクラッチ)」が動作することから、手軽に入手できる学習教材としての利用も出始めている。販売元のアールエスコンポーネンツでマーケティングを担当する宮原裕人氏に今後の展開などを聞いた。

(聞き手は田島 篤=出版局)


Raspberry Piの実績を教えてください。

宮原 裕人氏
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 2012年4月から販売を始めて、2013年8月末の段階で約61万台をアールエスコンポーネンツから出荷しました。これはワールドワイドでの数字です。

 日本での実績は、今年の春ごろから増え続けており、8月には過去最高の販売台数を記録したように急激に伸びています。

伸びた原因はなんですか。

 ここ1~2カ月を振り返ると三つの出来事がありました。一つは日経LinuxのムックとRaspberry Piのセットが売れたこと。ムック『誰でもできる! Raspberry Piで楽しもう』とRaspberry Piのバンドル販売が予想以上に好評でした。Raspberry Piだけだと使い方に不安を覚える方に買っていただけたと考えています。同時に、その売れ行き自体が話題になって、より大きな反響を呼んだのかなとも見ています。

 もう一つは、8月中旬に開催されたイベント(関連記事1)に参加してRaspberry Piを紹介したことです。当イベントの後、参加者からの問い合わせが入ったりして関心の高まりを感じました。3つめは、大手新聞に記事が掲載され、技術者以外の幅広い方々に知ってもらえたことです。

 ただ、これらはきっかけであって、長い目で見ると、Raspberry Piを安定して供給できるようになったことが大きいでしょう。今年の春から大量入荷が可能となり、夏ごろまでに、注文後すぐにお渡しできるようになりました。また、5月には、販売一周年キャンペーンとして、限定版Blue Raspberry Piをリリースし、Raspberry Piの開発者であるEben Upton氏が来日して日本各地で講演活動などを展開したことも、日本での普及を下支えしていると思います(関連記事2)。こうした取り組みが奏功して日本でもRaspberry Piが盛り上がりつつあるのかなと感じています。

 さらに言えば、モノ作りへの関心の高まりも影響しているのではないでしょうか。具体的には、3Dプリンターなどのツールが使いやすくなることで誰もがモノ作りに参加できるとする「メイカームーヴメント」や、社会とのつながりのなかで協調してモノ作りに取り組む「ソーシャルファブリケーション」への注目も、日本におけるRaspberry Piの出荷拡大に影響しているのかもしれません。

Raspberry Piの今後のビジネス展開は。

 Raspberry Piの仕様や製品ラインアップについては、開発者であるEben Upton氏が理事を務めるRaspberry Pi財団が決めます。アールエスコンポーネンツはそれに歩調を合わせて周辺機器、例えばハードウエア開発用モジュール(PiGo)や拡張ボード、あるいは収納ケースなどを販売していく予定です。