データセンター向けの大規模ネットワーク構築・運用の新技術「イーサネットファブリック」。同技術を搭載した機器市場をけん引するのが米ブロケード コミュニケーションズ システムズだ。2013年1月に同社の新CEO(最高経営責任者)に就任したロイド・カーニー氏は初来日の会見で「イーサネットファブリックが仮想化の費用を削減する」と強調(関連記事)。そのイーサネットファブリックをベースとしたデータセンター向けの新戦略や、SDN(Software Defined Networking)、NFV(Network Function Virtualization)への取り組みをカーニーCEOに聞いた。

(聞き手は加藤 雅浩=日経コミュニケーション


2013年5月に発表した新戦略「オンデマンドデータセンター」について聞きたい。昨年提唱した「バーチャル(仮想)データセンター」を進化させたものか。

米ブロケード コミュニケーションズ システムズ CEO ロイド・カーニー氏
米ブロケード コミュニケーションズ システムズ CEO ロイド・カーニー氏

 その通りだ。データセンターの仮想化は急速に進化している。ほんの数年前までは、サーバーを仮想化するか否かを議論していたのに、今ではすべてのサーバーを仮想化することがCIO(最高情報責任者)の使命となっている。仮想化しないのであれば、その理由を説明しなければならないくらいだ。

 これからのデータセンターにユーザーが求めているのは「アジャイル(agile)」であること。ある事業者はユーザーのゲーム会社からのデマンドがどの程度になるのか、判断がつかずに悩んでいた。ゲームがヒットすれば、20のサーバーと数ギガバイトのストレージが必要になるが、ヒットしなければサーバーは2つ、ストレージも少なくてすむ。こうした要件を満たせる柔軟性(フレキシビリティー)がこれからのデータセンターには欠かせない。

 そこで重要になるのがオンデマンドという特性を備えること。顧客に対して必要なものを必要なときに提供できることが求められる。

オンデマンドデータセンターを実現するために必要なものは何か。

 オンデマンドに機能を提供するための重要なパーツが仮想アプライアンスだ。当社はレイヤー2からレイヤー7までのネットワーク機能を基本的にはすべて仮想化していく。既に仮想ルーターや仮想ファイアウォール、仮想ロードバランサーを提供している。一方で物理インフラは既存のイーサネットファブリック製品で対応可能だ。

仮想ルーターとして昨年買収したVyattaを製品化した。

 Vyattaの特徴は、米ヴイエムウェアや米マイクロソフトの仮想スイッチ(ハイパーバイザー)にはないレイヤー3の機能を提供できること。また、当社のテストによれば、米シスコシステムズの仮想ルーターに比べて10倍高速だ。