ネットワークとモバイルデバイスの進化が、さらなる大きな変化を経済環境にもたらそうとしている。「情報の流通量はさらに増え、情報の流通コストはさらに下がる。これは、今までの『ネットエコノミー』の変化とは、また違った変化をもたらす」。ボストン コンサルティング グループ(BCG)でテクノロジー分野の日本リ―ダ―を務める東海林一パートナー&マネージングディレクターはこう語る。企業の意思決定層やITエンジニアは何を知り、何を備えるべきか。東海林氏に聞いた。

(聞き手は高下 義弘=ITpro


ネットエコノミーは第2の成長期を迎えていると指摘している。どのような趣旨か。

ボストン コンサルティング グループ(BCG)でテクノロジー分野の日本リ―ダ―を務める東海林一パートナー&マネージングディレクター
ボストン コンサルティング グループ(BCG)でテクノロジー分野の日本リ―ダ―を務める東海林一パートナー&マネージングディレクター

 モバイルを中心とした通信インフラの高度化、それからタブレットをはじめとしたマルチデバイスの進展により、情報の流通と活用にまつわるコストがさらに下がっている。これがネットエコノミーに大きな変化をもたらしている。

 この変化は、大企業か中小企業かといった企業規模に左右されない。また、先進国か新興国かといった国の違いも関係ない。どの事業主も関係なく、おしなべて受けるであろう重要な動きである。

 こうしたネットエコノミーの本質的な価値を正しく理解することで、どの企業もビジネスチャンスを広げられる可能性がある。

具体的にはどんな動きが起きているのか。

 一つは「販売単位のマイクロ化」だ。例えば楽曲販売が典型例である。インターネット販売が普及したことにより、アルバム単位というよりは、1曲、2曲といった楽曲単位で購入する行動が増えている。

 以前は流通販売コストの関係上、アルバム単位などまとまった単位での売買が通例だった。しかしネットインフラの整備と普及により、企業は「ある特定の曲さえ聞ければいい」という顧客のニーズに対応できるようになった。こうした販売単位のマイクロ化は、電子書籍、保険サービス、教育産業など、ほかの領域でも起きていて、しかも顧客の支持を受けているものも出てきている。

 最近3Dプリンターが注目を浴びているが、3Dプリンターによるプリントサービスは、造形物の販売単位のマイクロ化を進めそうだ。今までなら製造コストや流通コストの都合上、販売しにくかったニッチな商品でも、3Dプリントサービスをインフラとして使うことで、容易に流通できると予想される。

 もう一つは「サービスや販売の適時化」だ。ご存じの通りだが、人々はモバイル機器を日常的に持ち歩くようになり、外出先でも抵抗感なく普通に使うようになってきた。その場で発行されるデジタルクーポンなどはその典型だが、顧客はデジタル機器を使っているという前提でサービスを構成することにより、販売チャンスは広がっている。