英StorMagicは、サーバー仮想化環境の高可用性(HA)構成を安価に実現するミドルウエア「StorMagic SvSAN」を開発するベンダーである(関連記事:ストレージソフトでVMware仮想サーバーの高可用性構成を安価に)。2013年7月3日には、急伸する大企業市場の需要に合わせて機能を強化した新版「StorMagic SvSAN 5.1」を発表した。ITproは、同社CEOに、サーバー仮想化の市場動向と、SvSAN新版の意味を聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


SvSANとサーバー仮想化市場の動向は。

英StorMagic、CEOのHans O'Sullivan氏
英StorMagic、CEOのHans O'Sullivan氏

 SvSANは、高価な共有ストレージを不要とすることによって、サーバー仮想環境のコスト(特に設備投資費)を下げるミドルウエアだ。内蔵ディスクだけで、仮想サーバーのHA構成やライブマイグレーションが可能になる。SvSANの実態は仮想アプライアンスの形態をしたiSCSIターゲットストレージだ。異なるハイパーバイザー上で動作するSvSAN同士(物理サーバー間)でデータをミラーリング同期する仕組みによって、共有ストレージを代替する。

 SvSANの導入システムは全世界で1万4000件に上る。導入数は2011年に前年度比300%、2012年には前年度比800%伸びた。ユーザーの動向としては、大手企業による大規模導入案件が急伸している。以前からサーバー2台だけの小規模導入は豊富だったが、最近では特に、全国の拠点にSvSANを導入するような大規模な用途が増えている。

 この需要を受けて、大企業のコストをさらに削減する機能強化を図った新バージョン「StorMagic SvSAN 5.1」を、2013年7月3日にグローバルで発表した。7月末の出荷を予定している(ネットワールドによる国内出荷は2013年秋)。新機能は大きく二つある。ベアメタルのリストア機能を付けたことと、Hyper-Vで動作するようにしたことだ。

ベアメタルのリストア機能とは何か。

 一言で言えば、物理サーバーのシステム設定をコンフィグファイルとして保存しておき、このファイルを介して任意の物理サーバーに設定を反映させる機能だ。システム障害時に、新しい物理サーバーを持ってきたとき、保存済みの設定情報があれば、これを利用してシステムを素早く復旧できるようにしている。

 StorMagic SvSANでは、2台の物理サーバー同士が互いにストレージをミラーリング同期しているので、結果として個々のサーバー設定を相互に持ちよっている状態になる。つまり、片方の物理サーバーが障害で落ちたとしても、もう片方の物理サーバー機が設定ファイルのコピーを持っている状況になる。これを利用して、システムを復旧する。

ベアメタルのリストア機能の意味は何か。

 特に大企業において、物理サーバーの置き換えにかかるメンテナンス費用が大きく減る。例えば、本社とROBO(リモートオフィス/ブランチオフィス)との間でデータを同期しておけば、ROBO(個々の拠点)の物理サーバーが落ちた際に、本社側にバックアップしてある設定ファイルを使って、本社側の運用管理画面から、これを復旧できる。

 大企業のROBO環境は、SMB(小規模環境)とは異なり、ITの管理者が存在しない。このため、通常であれば、本社からエンジニアを派遣してシステムを復旧させる必要がある。ベアメタルのリストア機能を使えば、この作業が不要になる。この意味において、ROBO環境を持つ大企業にとって、特に需要が高い機能強化となる。

Hyper-V対応の意味は何か。

 Hyper-Vは需要が高い。特に、EnterpriseライセンスでWindows Serverを利用している大企業はHyper-Vを無償で利用できるので、Hyper-Vを使いたいという要求が大きい。

 また、そもそも大企業は複数のハイパーバイザーを採用してマルチハイパーバイザー環境となっているため、こうした複数のハイパーバイザーで動作することが強く求められていた。今後も、さらに動作対象のハイパーバイザーを増やしていく予定だ。

大手企業によるコスト削減の例は。

 典型的な事例では、少なくとも10個所のROBOの拠点にSvSANを配置している。最も大きな事例では、2200個所の拠点にSvSANを配置している。

 この企業の場合、SvSANを使うことで、設備投資費を1600万ドル削減し、電力を4割削減した。さらに、SPOF(単一障害点)がなくなった。サーバー仮想化基盤の導入期間も、6カ月で済んだ(SvSANを使わない場合、2年間はかかっていた)。