「モバイルデバイスの企業での活用に関し『守るべきものはスマートフォンやタブレットなどのデバイスではなく、その中にあるデータ』という考え方が広まりつつある」---ガートナー リサーチ リサーチディレクター ソン・チャン氏は指摘する。その背景とその方針に基づく管理方法について聞いた。
企業におけるモバイルデバイス管理はどのように変化しているのか。
これまで、企業はモバイルデバイス全体を厳格に管理しようという考え方が強かった。しかし、BYOD(私物デバイス活用)が広まるにつれ、新しい考え方が広がってきた。「守るべきものはスマートフォンやタブレットなどのデバイスではなく、その中にあるデータ」というものだ。
その理由は、オーナーシップ(所有権)だ。個人のスマートフォンを業務で使用しようとすると、企業のIT部門が安全を確保するためにカメラを使えなくしたり、Buetoothを使えなくしたりする。個人所有のデバイスに対し、IT部門にそんなことをする権利があるのか、という従業員の反発が背景にある。
どのようにしてデータだけを守るのか。
コンテナライゼーションやラッピングと呼ぶ技術を使用するモバイルデバイス管理製品が出てきている。業務で利用するアプリケーションやデータを「コンテナ」と呼ぶ領域の中に入れ、私的な利用の際はコンテナの中にユーザーや他のアプリケーションがアクセスできないように覆い隠す。
コンテナの中のデータは暗号化する。紛失や盗難の際にデータを遠隔で消去(ワイプ)する際にも、コンテナの中のデータを消去すればよい。
日本のBYOD導入率は世界の中でも低い。IT部門がすべてを管理しようとする傾向が強いことがその理由の一つにあるように思える。
ガートナーは、全ての企業がBYODを導入すべきだとは考えていない。しかし、企業にとってBYODは真剣に考慮する必要があるテーマだと言える。
世界のエンタープライズは、ロックアップされたモデルからオープンなモデルに移行しようとしている。こういったトレンドは今後も継続する。職人は、仕事で使う道具は、雇用主から与えられるのではなく自分で選び、使いやすいよう手入れをする。現代のナレッジ・ワーカーも、自分の道具は自分で選びカスタマイズしていくだろう。