合併を繰り返し、売上高2兆8000億円の巨大企業となった医薬品卸のメディパルホールディングス。傘下のメディセオは医療用医薬品の卸として、Paltacは一般用医薬品などの卸として、いずれも業界最大手だ。今、単なる規模の拡大だけでなく、ビジネスモデルの変革に挑むとする渡辺秀一社長に、その事業戦略とIT活用による“リアルタイム経営”の勘所を聞いた。

(聞き手は木村 岳史=日経コンピュータ 編集委員)

医薬品卸の業界は合併を繰り返し、御社を中心に再編が進みました。

渡辺 秀一(わたなべ・しゅういち)
1975年3月に法政大学法学部法律学科を卒業、同年4月に三菱重工入社。79年8月にクラヤ薬品入社。90年10月に医療機器本部長。同年12月に取締役、94年12月に常務取締役に就任。2000年4月に合併により、クラヤ三星堂の取締役東日本営業本部長に就任。04年10月に持ち株会社制度へ移行により、メディセオホールディングスの取締役営業本部長とクラヤ三星堂の代表取締役社長を兼務。11年4月にメディパルホールディングス代表取締役副社長。12年4月より現職(メディセオ代表取締役会長も兼務)。1952年4月生まれの61歳。(写真:陶山 勉)

 日本の経済成長が止まり高齢化で医療費が増大したことで、無駄を無くせという話になりました。そして、一番不要だと思われるのが我々のような卸です。表に出ない業種ですから、国民に無駄だと見なされてしまうのです。

 そうした危機感から、我々は合併を繰り返して、コストを削減してきたわけです。

 もちろん私としては、医薬品卸は世の中の役に立っていると思っています。実際、東日本大震災の時にはモノの流れを止めなかったし、そのことで評価もされました。実は、その観点から情報システムについても、特別の思いがあるのですよ。

そう言えば、システムの内製にこだわっていると聞きます。

 実は私が社長になった時、物流センターのシステムがトラブルを起こしました。当時はアウトソーシングしていましたので、原因がよく分かりませんでした。卸の物流センターで、モノがどこにあるか分からないのは致命傷です。実際に売り上げがものすごく落ちました。

 その時に感じたのは、卸は物流だけでなくシステムも他人に任せたらいけないということです。システムはコスト削減の対象ではない。我々のコアは、モノを届ける機能とそれを合理的に管理するシステム、そして人です。これらがきちんと機能しないと流通の役割を果たせません。ですから、システムの内製化に踏み切りました。

一時、業界2位のアルフレッサとの合併を目指しましたね。

 あの話も、基本的な考え方としては無駄を無くそうということでした。ただ、両社には物流やシステムに対する考え方に差がありました。我々は顕在化したニーズだけが顧客の要望ではないと考え、定時配送の仕組みを作っていました。先方は急ぎのニーズに対応することが重要だと考えていましたので、折り合えませんでした。もちろん独占禁止法上の問題もありましたが。