「SEよ 大志を抱こう」「SEを鍛える 開講横塚塾」と、3年半にわたり日経コンピュータのコラムを執筆してきた東京海上日動システムズの横塚裕志社長。一貫して、SEの働き方を変えようと説いてきた。それが日本企業のイノベーションに必要なことであり、SE自身も仕事にやりがいを持てると信じるからだ。連載の締めくくりに当たり、その思いを聞いた。

(聞き手は木村 岳史=日経コンピュータ 編集委員)

3年半にわたり連載を書かれてきたわけですが、その根底にある思いをまず話してください。

横塚 裕志(よこつか ひろし)
1973年4月に東京海上火災保険(現・東京海上日動火災保険) 入社。以来ほぼ一貫して情報システム部門に従事する。情報システム部長、執行役員IT企画部長などを経て06年7月から現職を兼ねる。07年6月に東京海上日動常務取締役。09年6月に同社退任、現職に専念する。1951年3月生まれの62歳。(写真:陶山 勉)

 日本企業は、ITの活用度が欧米や韓国の企業に比べ劣っています。日本企業が復活するためには、その弱点を克服しなければなりません。ですから、SEがどういう働き方をすると日本企業のIT活用度を高めていけるのか、そのためにSEがどのような提案をすればよいのかというのが、連載を書くにあたっての基本的な問題意識でした。

 同時に、言われた通りにシステムを作っていたのでは、ビジネスに貢献できないということも、問題意識としてありました。今までのやり方を続けていてはダメです。SEの仕事のやり方そのものをイノベーションしないと、ITを活用してイノベーションを実現することなどできません。

 そのために私が一貫して書いてきたことは、新しい働き方をしようよ、ということです。決して空論ではなく、自社で私が言い続け、実践してきたことです。そうした経験を踏まえて、SEの皆さんの役に立つようなアドバイスをしたいというのが、根本的な思いですね。

「要件はユーザーが書く」はダメ

横塚さんが若手のSEだった頃、どんなスタンスで仕事に取り組んでいたのですか。

 私は、若い頃からビジネス部門のやりたいことや要望を聞いたうえで、より良いシステム活用の在り方を常に考え、提案するようにしていました。例えば業務効率化プロジェクトですと、「ここまでオンライン化するのなら、ビジネスプロセスをこう変えたほうがいいのではないか」といった具合です。ビジネス部門の人も考えていますけど、我々のほうがもっと良いことを思い付くというのが私の持論です。だから「SEよ、頑張れ」というわけです。