「企業で新たな取り組みを起こす場合には、現場の課長クラス、いわゆるミドルマネジャーの『巻き込み力』がカギを握る」。富士ゼロックス総合教育研究所の坂本雅明氏(研究室 室長)はこう指摘する。坂本室長は、同研究所が2013年2月に発行した「人材開発白書2013」の調査とりまとめを担当した。

 坂本室長は「組織間での連携が必要となるが、相手方の組織に協力を要請する際、得てして腰が上がらないもの。だが、臆せず一歩踏み出すべきだ。『人は他者に協力を依頼する際に、その協力の度合いを低く見積もる傾向がある』という学術研究結果もある」と語る。

(聞き手は髙下 義弘=ITpro


富士ゼロックス総合教育研究所が発行した「人材開発白書2013」では、「組織間連携」と「ミドルマネジャーの役割」をテーマにしています。社内の様々な組織の協力を取り付けるというのはシステム構築でしばしば求められることなので、IT分野にも通じるテーマと言えそうです。この組織間連携とミドルマネジャーの役割をテーマにした、その意図は何でしょうか。

富士ゼロックス総合教育研究所の坂本 雅明 研究室 室長
富士ゼロックス総合教育研究所の坂本 雅明 研究室 室長

 なるべく組織間連携が必要ない状態を作るのが、本来の企業のあり方です。しかし、新しい取り組みを進めるに当たっては、組織間連携が必要になることもあります。このとき、中心となる役割を担うのは、現場をとりまとめるミドルマネジャーです。

 ミドルマネジャーにはその際に「巻き込み力」が求められます。巻き込み力とは、組織間連携が必要になった時に、必要な相手とすぐに協力関係を構築し、物事を進めていく力のことを言っています。

 近年、組織間連携がうまくいかなかったがために、ライバル企業に大きな後れを取ってしまったという話が、あまりにも多く聞かれます。アイデアとしては社内に既にあり、技術も人的資源も備えている、実行したら十分に実現できたはずなのに、社内の調整に手間取ったために商品やサービスを市場に投入するのが遅れてしまった、というものです。もし組織の課題が解決できなければ、今後も同じようなことが頻発するでしょう。

 そこで今回の白書では、組織間連携とミドルマネジャーの役割について焦点を当てて調査を進めました。