ビジネスを進めるうえで情報共有は必須だが、きちんとした管理を行い、情報漏れを防ぐことも同じように重要である。多くの企業間でセキュアに情報やデータ交換ができるサービス「IntraLinks VIA」は、情報を共有しない「アンシェア(unshare)機能」が大きな特徴だ。米イントラリンクス社長兼CEO ロナルド・W・ホブスピアン氏に、その狙いなどを聞いた(関連記事:アクセス権限管理を強化した企業間データ交換サービス、米イントラリンクスが提供 )。

(聞き手は本間 康裕=ITpro)


「IntraLinks VIA」を開発した狙いは?

 これまで当社は、金融業界のM&Aに関する情報やデータを、コンプライアンスに基づいた方法でセキュアに複数の企業間でやり取りできる「ディールスペース」というサービスを提供し、実績を上げてきた。対象は、世界中の金融機関や法律事務所、製薬会社やエネルギー関連企業などだ。ただ、このサービスはそうした企業の上層部向けのサービスで、それほど多数のユーザーの利用を想定していない。

写真1●米イントラリンクス社長兼CEO ロナルド・W・ホブスピアン氏
 そこで、もっと一般的な企業でより多くの人々が利用できるソリューション「IntraLinks VIA」を開発した。企業のファイアウォールを越えて、しっかりしたセキュリティのもと、コンプライアンスを遵守したうえで、互いに情報やデータをやり取りするためのサービスだ。

 まず4月29日に、英米独で提供を開始する。日本語版やサポートの提供などを含む日本での本格展開は2014年を予定しているが、実際には同日以降、海外版を国内で利用することは可能だ。

具体的な利用イメージを教えて欲しい。

 Workstream(ワークストリーム、仕事の流れ)という概念で説明しよう。企業は、取引先などに多くの情報を流す。途中で取引を打ち切る企業もあるだろうし、無事に最後まで仕事をやり遂げる企業もある。

 ただし、通常の手段では、取引を打ち切った企業や取引を終了した企業にもデータが残ってしまう。これでは、セキュリティやコンプライアンスの面で問題が起こりかねない。IntraLinks VIAは、やり取りした情報やデータを全て管理して、情報の漏洩や悪用を防ぐ機能を持っている。

 現在フォーミュラ1のマクラーレン・チームがIntraLinks VIAのベータ版を利用しているが、彼らはこのような感じで、必要な部品やサービスを供給する企業とやり取りしている。

これまでのサービスとどこが違うのか。

 最大の特徴は、unshare(アンシェア)と呼ばれるデータ管理機能、つまり非共有化だ。どのファイルを誰にいつまで見せるかなど、アクセス権限を細かく設定できる。従来のこうしたシステムは、情報のシェア・共有を強く意識しているが、アンシェア、つまりシェアしない、共有化しないことを意識したシステムは他にないと思う。

 大きく2つの設定方法がある。1つは認証ベースの制限で、閲覧を許可する人物を指定・解除する。もう1つは時限的制限で、あらかじめ決めた期限をもってデータを見られなくする。この2つを組み合わせて使うことも可能だ。

 具体的には、前者は配布したセキュリティキーを無効にすることで、ユーザー認証を取り下げる。IntraLinks VIAでは、サーバーにアップロードする情報は256ビットの暗号化を施される。ダウンロードしたら、まず復号しなければならないが、それにはセキュリティキーが必要。キーの認証を取り消されれば、当然開けない。

 多くの人が、例えばパソコンでダウンロードしたコンテンツを、タブレットなどにコピーして共有化しているが、たとえそうなっても、とにかくキーがないと開けないので、安全と言える。

 後者は、DRM(デジタル・ライツ・マネジメント)の技術を利用したセルフシュレッダー機能で、設定した期日でデータを閲覧できなくなる。入札業務などで多くの企業に同じファイルを送信した後、交渉が進むにつれて相手を絞り込んでいく際に、途中で除外した企業にはデータを見えなくするなどの運用ができる。

 キーだけでも十分かもしれないが、当社としては企業から出ていく情報をしっかり管理する、というコンセプトから、一歩進んだこの機能を搭載した。ちなみに私なら、セキュリティやうっかり忘れなどを考慮して、全てのファイルを90日で使えなくする設定にする。もし、期限を延ばして欲しいという要請があったら、その人だけに対応すればいい、と考える。