データサイエンティストは、米ハーバード・ビジネス・レビュー誌が「21世紀で最もセクシー」と称した職業である。アクセンチュアにおいて15人のデータサイエンティストと55人のITエンジニアや経営コンサルタントを率いるのが工藤 卓哉 シニア・プリンシパルだ。彼は、米ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏の下、データ分析に基づいてアメリカ国家戦略の主軸である医療改革と教育改革に取り組んだ経歴を持つデータサイエンティストである。データサイエンティストに求められる役割と能力などについて話を聞いた。

(聞き手は田島篤=出版局)


データサイエンティストという職業が今注目を集めている理由は。

写真:都築 雅人

 一言でいえば、ビッグデータを活かしたビジネスの有効性が認知されたためだ。米Googleや米Amazon.comといったネット系企業の成果、代表的な例では協調フィルタリングを使ったレコメンデーション(推薦)や人工知能における自然言語処理を用いた検索などの効果を目の当たりにする格好で、ビジネス領域における圧倒的なボリュームのデータを活かしたサービスの有効性が認められたためだと考える。デジタルビジネスを牽引し続けるGoogleが決算で過去最高益をマークしたのは、アナリティクスで躍進する企業にとって画期的な節目の年となった。

 こうした成功事例が見えてきたと同時に、データとその処理基盤の整備が進むことで、ネット系企業以外にもデータ分析が身近になりつつある。

 事実昨年は、リアルとバーチャルの融合体であるニューエコノミーを実現したAmazonのJeff Bezos会長 兼 CEO(最高経営責任者)が、全米小売業協会(National Retail Federation=NRF)から金賞を受賞した。これはリアルビジネスへの脅威であり、チャンスであると多くの企業幹部に捉えられたはずだ。また、一例だが、スマートフォンに代表されるモバイル環境が普及することにより、ネット系以外のリアル店舗においてもさまざまなデータを収集・分析して収益向上につなげるビジネスモデルが可能になりつつある。

 こうしたことから、ビッグデータを活かしたビジネスを支える人材として、データサイエンティストに期待が寄せられているのだろう。

人材不足も指摘されているが。

 その通りだ。データサイエンティストに期待が寄せられているにもかかわらず人数が足りないことも、大きな注目を集めている理由の一つだろう。需要が高まりつつあるのに、供給サイドの人材が少ないので、それを解消するにはどうしたらよいのかが論点になっている。