中古車買い取り・販売の大手ガリバーインターナショナルが、ビジネスモデルを大きく変えつつある。最近の業績低迷を脱して、小売業への業態転換を加速。さらに、新車販売やグローバル展開にも本格的に乗り出す。目指すは自動車の流通革命だ。そのための武器にするべくITを「イノベーションツール」と位置付ける羽鳥由宇介社長に、その経営戦略を聞いた。

(聞き手は木村 岳史=日経コンピュータ 編集委員)

弟の貴夫氏も社長を務める二人社長体制ですね。

1995年に創業直後のガリバーインターナショナルに入社し、取締役に就任。1999年に常務取締役、2001年に専務取締役、2008年6月より現職(弟の貴夫氏も同時期に社長に就任)。札幌店など複数店舗で店長を務めた後、独自の販売システムである「ドルフィネット システム」の開発や事業拡大、新規事業の立ち上げ、オークション運営会社などとの渉外活動などを主導した。(写真:陶山 勉)

 「デュオ経営」と呼んでおり、兄弟で持ち株数も同じです。二人で議論しながら経営することで、結果として意思決定が速まると考えています。かんかんがくがくできる組織風土をつくりたいというのがデュオ経営を選んだ一番の理由です。会長(羽鳥兼市氏)に二人でやらせてくれと言ったとき、随分迷ったようですが、半年後に承諾してもらいました。

最近、業績の低迷が続きましたが、要因は何ですか。

 業績が大きく動いたのはいくつかの要因がありますが、外的要因に東日本大震災と2度のエコカー補助金の影響があります。

 震災では多くの車が津波で流されたので一気に需要が増えましたが、その後、反動で供給過多になり相場が崩れました。ただ、それよりも影響が大きかったのが、新車のエコカー補助金ですね。補助金で新車のコストメリットが出すぎたものですから、中古車市場は厳しい状況に追い込まれました。

 ただ、企業体質をより筋肉質にできましたし、営業力も付きましたので、結果的に良い経験だったと思います。補助金が終了した2012年9月以降は業績が急回復してきましたから、来期が楽しみです。

遅れた業界をIT活用で変える

営業力が付いたとのことですが、最近注力している小売り事業が伸びているのですか。

 はい。小売り事業へのビジネスモデルの転換が進みました。中古車を買い取って卸売りするのが我々のメインのビジネスだったのですが、買い取った車を一般の顧客に販売する小売りに事業転換を図りつつあります。卸売りでは市況の影響を強く受けますが、小売りの場合、それほど影響を受けません。実際このところ収益を大きく押し上げているのは、小売り事業なのです。

 ただそうは言っても、今は中古車の買い取りでのシェアが10%であるのに対して、小売りでのシェアは2%もありません。10%ぐらいまでは小売りのシェアを拡大できるのではと考えています。