TOKAIコミュニケーションズ(旧名・ビック東海、以下、TOKAI COM)は2013年4月、提携先である台湾のSYSCOM Computer Engineering(以下、SYSCOM)とともに、台湾現地に合弁会社のCloudMasterを設立する。新会社の主な事業内容は、システム開発事業、クラウド事業、EDI/EAI SaaS事業、HIS(ヘルスケア情報システム)事業、である。ITproは、TOKAI COM社長の鴇田勝彦氏に、合弁会社設立の背景と狙いを聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


合弁会社「CloudMaster」設立の背景は。

TOKAIコミュニケーションズ代表取締役社長の鴇田勝彦氏
TOKAIコミュニケーションズ代表取締役社長の鴇田勝彦氏
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 第一に、国内のITサービス業界の市況が悪化していることがある。リーマンショック後に、だいぶ市場規模が落ち込んだ。その後は微減のトレンドが続いている。今後も見通しは厳しく、2016年に、ようやくリーマンショック前の状態に戻れるという状況下にある。

 一方、TOKAI COMは2003年から、台湾の情報サービス企業であるSYSCOMとの間で、オフショア開発のアウトソーシングやSYSCOM子会社への出資などで関係を持っていた。2010年末には、SYSCOMのジェームス・リュウ社長と実際に会って、色々と話をした。

 TOKAIグループの場合、水やガスなどの生活インフラを手がけるTOKAIと、ITサービス産業を手がけるTOKAI COMを中心に、合わせて22の会社を抱えている。ここで、グループ全体の成長戦略を考えると、TOKAI COMに対する期待が一番大きくなる。

 生活インフラのTOKAIの場合、上海での事業展開など、それなりに海外への進出を果たしてきた。その一方、TOKAI COMの場合、SYSCOMなどの海外企業との取引はあるものの、自ら海外に進出してはこなかった。

 こうしたなか、SYSCOMのリュウ社長と話をしているうちに、SYSCOMが7カ国17拠点に事業を展開していることが分かった。特に中国との関係が強く、上海や西安など5カ所に、開発拠点を持っていた。TOKAIグループも、台湾、中国、東南アジア、欧米、という常識的な成長シナリオを描いていたので、SYSCOMと一緒に事業をやろうと思った。

合弁会社を設立することで得られる効果は。

 まずは、これまでのSYSCOMとの取引であるオフショア開発を、新会社に担ってもらうことができる。さらに、新会社を通して、中小企業向けのクラウド運用基盤ソフト(エンドユーザーがセルフサービスポータルで仮想サーバーなどをプロビジョニングできる環境ソフト)を日本に持ってくることができる。

 台湾政府はクラウドに関心が高く、クラウドに対して国費を700億円くらい投入する計画がある。このうちの120億円を、台湾政府と台湾企業が出資する開発会社であるInstitute for Information Industry(以下、III)に投じ、新たにクラウド運用基盤ソフトを開発している。IIIは、CloudMasterに対してクラウド運用基盤ソフトをライセンス提供する。

 TOKAI COMでは、この新たなクラウド基盤ソフトを、TOKAI COMの国内データセンター連合(9社連合)を通じて提供する予定だ。中小企業など、これまではクラウドに投資できなかった企業に対して売っていく。このように、魅力的な商材が既にある状況にあった。

 この新たなクラウド運用基盤ソフトは、台湾政府がそれなりの国費を投じて開発しているものなので、安価に提供できる。さらに、エンジニアを抱えていない中小企業でも使いやすいものになる。難しいコマンドを打ったり、面倒なリソース管理の計算を必要とせずに、簡単に使えるようにしている。