この冬、全国各地で記録的な降雪が報じられている。首都圏でも例年になく、雪の降る日が多い。1月14日には東京都心で8センチ、横浜で14センチの積雪を観測し、7年ぶりの「大雪」となった。気象庁は当日未明まで、都心で積雪になる可能性は小さいと予報していたため、予想外の大雪で交通機関などに混乱を生じた。気象庁はこれに続く2月6日、「首都圏で大雪」との予報を出したが、都心では雪は降ったもののほとんど積もらず、再び予報を外した。

 そんな中、両日とも予報を的中させたのが、気象情報サービスのウェザーニューズだ。「サポーター」と呼んでいる全国400万人の個人会員から集めた「現在地の天候状態」の報告などを解析し、精度の高い予報につなげた。1月14日には約19万件、2月6日には約20万件もの情報がサポーターから寄せられたという。

 ウェザーニューズの草開千仁社長は「400万人のサポーターによる勝利」と強調し、「会員になってくれる人をもっと増やし、さらに予報の精度を高めていきたい」と話す。

都心でも大雪となった1月14日、気象庁が大雪と予報したのにそれが外れた2月6日と、ウェザーニューズは立て続けに精度の高い気象予報を出して話題になりました。的中した要因はどこにあるのですか。

草開:うちの気象予報士がすごかったわけではなく、自分がいるところの天気の状態を報告してくれた多くのサポーターの方々のおかげ、全国400万人のサポーターの勝利だと思っています。

 その点で言うと、昨年7月に「ウェザーニュースタッチ」というスマートフォン向けのアプリを大リニューアルしたことが大きかったですね。それまでは単純に天気を素早く確認できるアプリだったのですが、より多くの方に“参加”してもらえることを目的に刷新したんです。

参加、ですか?

リポーターの報告の蓄積から、前日に予報を修正

草開:はい。リニューアル以前は、有料で気象サービスを提供している約30万人のウェザーリポーターの方から頭上の天気を報告してもらうと同時に、その情報を提供していました。これを、アプリを無料ダウンロードした方全員にサポーターとして天気状況を報告してもらえるような形に変えたんです。それによってサポーターの数が400万人にまで増えました。

草開 千仁(くさびらき・ちひと)氏
草開 千仁(くさびらき・ちひと)氏
1965年生まれ。87年青山学院大学理工学部物理学科を卒業、同年4月ウェザーニューズ入社。96年8月取締役。99年8月副社長。2006年9月に社長就任。

 サポーターの方から寄せられるリポートというのは、一定の量を超えると質に転じます。最終的にコンテンツの価値が高まるわけです。通常は1日平均1万5000~2万件くらいの報告が寄せられるんですが、1月14日には約19万件、2月6日には約20万件にまで達しました。

 それではなぜ精度の高い予報を出せたのかは、2月6日の雪予報を前日と当日に分けて説明すると分かりやすいと思います。

 ウェザーニューズは2009年頃から、ウェザーリポーターから寄せられた報告をずっと蓄積してきました。これに過去の実際の気象データを重ね合わせることで、コンピューターのシミュレーションによる天気予報とは異なる解析ができるようになります。

 私たちも2月5日の午前中までは気象庁と同じように翌日は首都圏で大雪になりそうだと予報していました。しかし昼以降には、「雪は降るだろうが、大雪になることはない」と判断を変えたんです。過去にウェザーリポーターからいただいた情報を基に分析した結果、修正したわけです。この数年間ずっとリポートを送り続けてくれた方たちのおかげで、その蓄積があって前日に精度の高い予報を出せたんです。