「将来はプログラマになりたい」と口をそろえるのは、もはや立派なプログラマといえる小学生の二人。彼らは「Scratch(スクラッチ)」というプログラミング環境を使って、数えきれないほどのプログラムを開発している。Scratchは米MITメディアラボが開発して公開している、無料で使えるプログラミング環境(関連記事1)。世界中の子供たちに使われ、その成果となるプログラムはネット上で公開されている。特に優れたプログラムは「注目プロジェクト」としてScratchのWebページに大きく掲出される。ここに掲出されることは、子供たちの目標になっている。自作プログラムが注目プロジェクトに選ばれたこともある鹿島匠君(小学6年生)と、すでに数百本のプログラムを作成して公開している石原正宗君(小学5年生)の二人に、プログラミングの楽しさなどを聞いた。
 また、2012年に『中高生国際Rubyプログラミングコンテスト2012』でU-15(15歳以下)の部の最優秀賞に選ばれた山内奏人君(小学6年生)にもプログラミングを始めたきっかけなどを聞いた。

(聞き手は田島 篤=出版局)


いつからプログラミングをしていますか。

写真1●鹿島匠君(小学6年生)。愛機は「ThinkPad X60」
写真1●鹿島匠君(小学6年生)。愛機は「ThinkPad X60」
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鹿島匠君(以下、鹿島君) 2009年ごろからScratchでプログラミングをしています。(鹿島君のお父さんによる補足:レゴ マインドストームを持っていたのですが、ハードルが高く使っていませんでした。子供向けのプログラミングの本(『スクイークであそぼう』に出会ってScratchの存在を知り、それを体験できるワークショップに参加したのがきっかけです。)

石原正宗君(以下、石原君) 2010年3月に都内で開かれたScratchを体験できるワークショップに参加したのがきっかけです。それ以後、最低でも月1回の割合で、多いときには週1回ぐらいでプログラミングサークルなどが開催するワークショップに参加しています。

プログラミングのどこが面白いですか。

鹿島君 自分で考えて、作って動かすことができるところです。

写真2●石原正宗君(小学5年生)。愛機は初代「MacBook Air」
写真2●石原正宗君(小学5年生)。愛機は初代「MacBook Air」
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石原君 ゲームなどのプログラムを簡単に作れるところが面白いです。また、ScratchのWebページに公開することで、みんなに見てもらえるのも楽しいです。最初は、何が作れるのかわからなかったのですが、動画で教えてくれる初心者向けプログラミング学習サイト「ドットインストール」などを見たりして学んでいます。

作品歴を教えてください。

鹿島君 ScratchのWebページの「注目プロジェクト」に取り上げられたのは、「magnet」というプログラムです。引き寄せられたり、反発したりする磁石をゴールまで導くゲームです。(Scratchを教えている阿部和広氏による補足:最初のころを除いて、私は教えていません。このゲームは2013年2月18日現在で、世界中から1730回のアクセスがあります。アイデアもユニークで、ステージのデザインやゲームバランスも含め、普通に遊べるゲームとしての完成度が高いです)

 また、オセロゲームなども作っています。(阿部氏による補足:このすごいところは初期バージョンにあった角の処理のバグを小手先で直すのではなく、一度全部捨ててリライトしたことです。また、彼はネット越しに複数人でチャットするプログラムを、MITメディアラボの国際会議中に書き上げたことがあります。シングルバイトしか通さないプロトコルなのに自作の文字テーブルを作って日本語対応させていました。)

石原君 ScratchのWebページで公開している自信作だけでも100個ほど作りました。例えば、二人対戦の格闘ゲームや縦スクロールのシューティングゲームなどです。(阿部氏による補足:彼のすごいところは、SmalltalkでScratch自体をハックできるプログラミング技術もさることながら、プレゼンテーションの能力の高さです。自分の考えを的確に短く説明できます。MITメディアラボの国際会議でもパーフェクトに発表しました。その一方で、自分の限界を知っているのも素晴らしいです。一度、「今の自分にはまだ準備ができていません」と言われたことがあります)

なぜ将来プログラマになりたいのですか。

石原君 やはり作るのが楽しいからです。作ったものが動いてそれをみんなに見てもらうのが楽しいからプログラマになりたいです。
鹿島君 プログラムを作るのが面白いし、作ったものでいろんな人を楽しませたいと思います。それができるのがプログラマです。