ストレージや運用管理ソフトなどを手がける米EMCは2013年1月、パートナー制度「EMC Velocity」の内容を変更した。パートナー制度の変更内容と、その変更がユーザー企業に与える影響を聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


パートナー制度の変更内容と、ユーザー企業から見た意味は何か。

米EMCでグローバルチャネルマーケティング担当バイスプレジデントを務めるフレッド・コホウト(Fred Kohout)氏
米EMCでグローバルチャネルマーケティング担当バイスプレジデントを務めるフレッド・コホウト(Fred Kohout)氏

 パートナー制度(EMC Velocity)の変更点は、大きく三つある。一つ目は、スケールアウト型NASストレージ「Isilon」を、EMC Velocityの販売製品リストに取り込んだことだ。二つ目は、収益性が高いパートナー資格「スペシャルティ」を得るための条件を緩和したこと。三つ目は、需要創出のための販促費用を、以前の2倍に高めたことだ。

 これら三つの変更点は、いずれもユーザー企業にとって意味がある。販売パートナーの選択肢が増えるので、付き合いのある身近なベンダーからEMCの製品を購入しやすくなる。販促コストを増やしたことで、製品の情報も入手しやすくなっている。

IsilonはEMCの販売網では売っていなかったのか。

 今回初めて、EMC VelocityにIsilonを組み入れた。Isilonのトレーニングを受けることが必須となるが、今後はEMCのパートナーがIsilonを販売できるようになった。これまでは、米EMCが米アイシロン・システムズ(Isilon Systems)を買収する以前から存在している国内のパートナー制度の下で販売してきた。

 買収してすぐにEMC Velocityに取り込まなかった理由は、販売開始までのプロセスを大切にしている、というもの。十分に販売の準備が整うまでは、販売を開始しない。製品の販売に際してトレーニングを受けることが必須となっていることも重要なポイントだ。

 今後も、EMC Velocityで扱う製品/サービスは拡充されていく。直近で予定している製品/サービスとしては、オンラインバックアップサービスの「MozyPro」がある。

パートナー資格の緩和はユーザーにも意味があるのか。

 3種類の製品分野についてスペシャルティ(専門性)を認定し、認定者の収益性を高めている。「統合」(「VNX」などのSAN/NAS統合製品)、「高度な統合」(「Symmetrix」などのハイエンド製品)、「BRS」(「Avamar」などのバックアップ製品)---の3つである。

 従来、これらスペシャルティ資格の認定を受けるには、製品のカスタマイズやアプリケーション開発などの実装ができるエンジニアを確保している必要があった。今回、これを緩和し、販売に特化した専業内容でもスペシャルティ資格を取れるようにした。

 より多くのパートナーが、以前よりも高収益で製品を販売できるようになった。このことは、結果として、ユーザー企業から見たパートナーの選択肢が広がることを意味する。

どの製品が売れているのか。

 統合ストレージやバックアップ/リカバリー製品も堅調だが、何といってもIsilonが爆発的に売れている。

 2012年後半に販売を開始した中小企業向けの「VSPEX」(サーバー機やネットワーク機器を組み合わせたセット製品)も売れている。VSPEXのパートナーは800社以上に上る。