米コファックス(Kofax)は、文書を使った業務ワークフローをペーパーレス化するソフトウエア製品群を提供するベンダー。申込書などの文書データを電子化して取り込み、文書の種類に応じたBPM(ビジネスプロセス管理)を実行する。2013年1月1日には、最新ソフトとしてスマートフォンで文書を取り込むためのソフト「Kofax Mobile Capture」を国内で出荷した。同社幹部に、企業における文書スキャンの動向を聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


ペーパーレス化の背景は。

米コファックス(Kofax)でフィールド・オペレーション担当執行副社長を務めるハワード・ドレイトラー(Howard M.Dratler)氏
米コファックス(Kofax)でフィールド・オペレーション担当執行副社長を務めるハワード・ドレイトラー(Howard M.Dratler)氏

 現状では、金融業や保険業のように文書をやり取りすることによって仕事が回る業界であっても、文書の電子化が進んでいない。例えば、銀行では、新規口座の開設時のやり取りは電子化されていても、これ以外の用途、例えば住宅ローンの審査は電子化が進んでいない。

 このように、そもそも以前から文書の電子化が進んでいないという状況(電子化の需要)があった。それがここへきて、不景気による業界内の競争激化や周辺事情(金融であれば金利の低下など)により、着手すべき業務プロセス改善の手段として、文書のペーパーレス化に注目が集まっている。

 文書のペーパーレス化によって得られるメリットは、大きく二つある。一つはコスト削減であり、手動で文書を処理する場合よりも労力が減る。もう一つは、電子化によって文書を処理するのにかかっていた時間を短縮できること。申請書の審査期間を5日から3日に短縮する、といった業務プロセスの改善が可能になる。

 従来、紙文書をスキャンして電子データに変換するという作業は、情報のアーカイブ(長期保存)のために用いられていた。この一方で、現在注目が集まっている文書のペーパーレス化は、アーカイブではなく、情報を効率よく利用するための前処理としてデータ化するものだ。

Kofaxのソフトの特徴は。その背景は。

 Kofaxのソフトは、スキャンした紙文書など各種形式の電子ファイルを取り込んで、これらを自動的に仕分け処理し、文書の種類に応じてワークフローなどの業務プロセスを実行する。このための製品群をラインアップしている。

 機能面で注力しているポイントの一つは、フロントエンドでのデータ抽出、すなわち、できるだけ情報が発生した場所に近いところで、素早く電子化して取り込むことだ。電子化されていれば、その時点から電子化された業務プロセスに乗せることができる。できるだけ早い段階で業務のプロセスを開始することが重要になっている。

 日本国内で2013年1月に出荷した新ソフト「Kofax Mobile Capture」も、情報の発生場所での電子化を支援するものだ。スマートフォン(iPhone/Android)で撮影した書類データを、後行程であるサーバー側でのOCR(光学文字読み取り)処理に適した画像へと変換する。

Kofax Mobile Captureは通常のカメラ撮影とは違うのか。

 Kofax Mobile Captureを使うと、OCRに適した画像へと変換できる。明度の違いだけでなく、紙文書に印刷されている背景や文字の色の違いを考慮に入れて、白黒の2諧調画像(白バックに、文字だけが黒で書かれた画像)を生成する。簡単に取り込めるように、傾き補正なども実施する。こうして生成したOCR用データは、数十キロバイト程度とコンパクトになる。

 この一方、一般的なスマートフォンの標準機能の場合、オリジナルの写真画像は数メガバイトの大きさになる。このままのサイズでサーバーに送れば、情報量という意味では足りているが、効率が悪い。ただし、数十キロバイト程度にリサイズ/圧縮すると、今度は文字情報を読み取れなくなってしまい、役に立たない。

仕分けした文書をワークフローへとつなげるBPMの特徴は。

 業務プロセスを実装するためのシステム開発が容易なことだ。現在のBPM機能は、1年半前に買収した北アイルランドのシンギュラリティ(Singularity)の技術を使っている。これを使うと、取り込んだ文書に応じた動的な業務プロセスの実行を簡単に実装できる。

 BPMソフトのベンダーは多数あるが、こうしたベンダーの製品はソフトウエアのライセンス費用の3倍から5倍ものSI(システム開発)費用がかかる。一方で、Kofaxのソフトであれば、システム開発にかかる費用は、ライセンス費用とほぼ同じで済む。もちろん、KofaxのソフトとBPMベンダーのBPMソフトを組み合わせてシステムを実装することも可能だ。

Kofaxのソフトで効果を上げた事例は。

 住宅ローンの審査プロセスを省力化/短期化した実例を示そう。この金融機関では、以前は手動で紙文書を扱っていた。Kofaxのソフトを導入したことで、審査に必要な文書を準備するための要員が60人から10人に削減できた。文書群をチェック(レビュー)する要員も16人から3人に減り、1件当たりのレビュー時間も8分から2分に減った。