NECの業績が回復してきた。長い低迷から脱却するために、大幅な人員削減を含む構造改革に踏み切った同社だが、その成果もあり2012年4~9月期連結決算の最終利益が80億円と4年ぶりの黒字となった。売上高も目標を上回り、ようやく攻めの体制をとれるところまで来た。人員削減を「断腸の思いで実施した」と語る遠藤信博社長に、今後の成長戦略を聞いた。

(聞き手は木村 岳史=日経コンピュータ

4~9月期決算では4年ぶりの最終黒字となるなど計画よりも過達でした。構造改革の成果が出たわけですね。

1981年3月、東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了(工学博士)。同年4月にNECに入社。2003年4月にモバイルワイヤレス事業部長に就任し、超小型マイクロ波通信装置「パソリンク」の事業責任者として、新興国をはじめとした海外市場を開拓し、同装置を世界トップシェアに成長させる。06年4月に執行役員兼モバイルネットワーク事業本部長、09年4月に執行役員常務、同年6月に取締役 執行役員常務に就任。10年4月から現職。1953年11月生まれの59歳。(写真:陶山 勉)

 もちろん、全てがうまく回って答えが出たということではないと思っています。ただ、東日本大震災やタイの洪水の影響で市場が縮小した昨年度に比べ、今年度はリカバリーが見えていました。

 我々もうまく反応できた。通信事業者向けに加え、厳しいと言われていた一般企業向けでもITサービスがそれなりの結果を出して、全体を引っ張ってくれたと評価しています。

 断腸の思いで実施したリストラは半年間で終えることができました。その結果が数字に出てきたという面もあります。ですから、市況が好転すれば、NECはそれに反応して結果を出せる構造になってきたと考えています。上期に構造改革をやり遂げましたので、通期では400億円の効果が出てくるはずです。

スマホでレノボとの協業も検討

携帯電話事業は相変わらず不振です。スマートフォンやタブレット端末の存在感が高まる中で、どのように立て直すのですか。

 端末は最終的なソリューションを顧客に提供するうえで、ヒューマンインタフェースという観点で非常に重要です。その技術を持っておかねばなりません。

 ただ、端末はボリューム事業です。今年度の携帯電話全体の販売計画は430万台と言っていますが、十分なレベルだとは思えません。ボリュームを取るために、何らかのパートナーシップを結ぶというのが我々の方向感です。

 NECカシオモバイルコミュニケーションズはパートナーシップの第1弾ですが、スマートフォンなどのビジネスモデルは従来の携帯電話とは異なります。ですから、カシオ計算機との協業だけでは十分なボリュームを出せない。世界に目を向け新たなパートナーシップを考えていく必要があります。

例えばレノボとの新たな提携の可能性はありますか。

 現時点ではパートナーの候補を特定してはいません。ただ、PCで提携しているレノボは、その候補の1社であることは確かです。

(写真:陶山 勉)

業績回復を受け株価は上昇基調にあるとはいえ、依然低迷しています。企業買収などでさらなる事業の入れ替えもあり得ますか。

 入れ替えと言うか、事業の補強が必要でしょうね。我々はITとネットワーク、社会インフラとエネルギーを事業の4本柱と位置づけています。それらの柱を中心にいろいろと考えていきたい。最近では、米コンバージスから通信事業者向けのシステム事業を買収しましたし、オーストラリアのCSGのITサービス事業も買収しています。

 今後ともグローバル戦略の一環として買収を検討していくことが必要だと考えています。大手企業に手を出せるわけではありませんので、自分たちのビジネスの素地をつくるという観点で、事業を補強できる案件について、一つひとつ検討しながら進めていきます。