米アクロニス(Acronis)は、サーバーのイメージバックアップなど、情報システムのデータを保護するソフト製品を取り扱っている。2011年9月には米GroupLogicを買収し、多様なデバイスからデータを利用するための製品群を整備した。同社のCMOに、企業のデータ利用環境の変化と、国内で2013年に提供を開始するGroupLogic製品群の概要を聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


データ保護のトレンドは何か。

米アクロニス(Acronis)、チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)、戦略担当上級副社長のスコット・クレンショー(Scott Crenshaw)氏
米アクロニス(Acronis)、チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)、戦略担当上級副社長のスコット・クレンショー(Scott Crenshaw)氏

 ストレージとデータ保護は、情報システム全般の中でも、特に変化が激しい分野だ。こうした変化に対してアクロニスでは、IT部門が脅威を感じることなく、変化を上手に利用できるように支援していく。

 例えば、大きな変化の一つに仮想化技術がある。アクロニスの調査では、「仮想サーバーに関するデータ保護が十分である」と回答した企業は、わずか37%だけだ。古いタイプのデータ保護ソフトでは仮想環境の保護には適さないからだ。

 クラウド化が進んでいることもトレンドだ。上手に活用すれば、DR(災害時復旧)サイトや遠隔地へのデータレプリケーションを低コストで実現できる。データへのアクセス手段では、モバイル端末のBYOD(私物デバイスの業務利用)もトレンドだ。

 こうした変化に合わせて、アクロニスではデータ保護製品を提供している。機能面での優位点はコンセプト「Any to Any」にある。どのデバイス(iOS/Android/Windows/Mac)からでも、どのシステム(Windows/Linux)でも、どの仮想サーバー(VMware/Hyper-V/KVM/Xen Server)でも、どのストレージ(SAN/NAS)でも、つなぐことができる。

どのような製品をラインアップしているのか。

 大きく四つのカテゴリに分かれる。バックアップ/リカバリー、データマイグレーション、クラウドストレージ、ファイル共有/同期---、だ。

 バックアップソフトの特徴は、あるサーバーのイメージを、別のサーバー上にリカバリーできることだ。例えば、バックアップイメージを使ってDRサイトで復元できる。また、すでにサーバー機が存在していない過去のサーバーイメージを、現代の別の環境で復元できる。また、サーバーイメージ全体だけでなく、Exchange Serverのメールといったアプリケーションのデータや、ファイル/フォルダー単位でイメージから取り出すこともできる。

 データマイグレーションソフトの特徴は、Any to Anyで移行できることだ。物理サーバーと仮想サーバー間のほか、仮想サーバー同士でHyper-VからVMwareへ、といった移行ができる。仮想サーバーのイメージファイルとともに、メタデータ/設定をまとめて移行できる。仮想化を採用している企業の4分の1は、複数のハイパーバイザーが混在したマルチベンダー環境だ。このため、新たに導入したハイパーバイザーで問題が起こった際に、元の環境に戻すことができる点は重要だ。

 クラウドストレージの必要性も増している。この理由の一つは、クラウドを利用すればDRサイトを安価に実現できるということだ。以前はネットワークが遅かったためにクラウドストレージは実用的ではなかったが(最新のコピーをバックアップサイトに保持できなかったが)、現在は違う。特に、アクロニスのクラウドストレージサービスは、オンプレミスのストレージとシームレスに統合できる。オンプレミスのストレージにバックアップをとると、非同期でクラウドにデータをレプリケーションする。

 ファイル共有/同期ソフトは、BYODで発生するセキュリティの課題を解決する。現在の企業には“DropBox問題”が存在する。コンシューマ向けクラウドサービスのDropBoxを使って企業データを共有しているのだ。この問題を解決するために、米GroupLogicを買収して、企業向けのファイル共有/同期ソフトをラインアップに加えた。

米GroupLogicから得たソフトの概要は。

 企業が直面している三つのカテゴリーごとに、ソフトウエア製品を用意している。

 「ExtremeZ-IP」は、企業のクライアントとしてMacを利用できるようにするソフトだ。MacをWindowsネットワークに統合し、Active Directoryで管理できるようにする。これにより、Macに対して企業内での市民権を与えることができる。米国での価格は、最小構成(クライアント3台)で795ドル、25台で1995ドル、無制限で6995ドル、などだ。

 「mobilEcho」は、iOSやAndroidなどのモバイル端末から社内のファイルサーバーにアクセスするためのソフトだ。ファイルアクセスのアクセス権限管理ができるほか、いつだれがどのデバイスで何のファイルを利用したのか、利用時にコピーしたかどうか、などの監査証跡を残すことができる。

 「ActivEcho」は、DropBoxに相当する、ファイル共有/同期ソフトだ。こちらも、企業向けに、アクセス権限管理や監査証跡機能を備える。社内にサーバーを設置して運用する。米国での価格は、500ユーザー時に、1ユーザー当たり年額55ドルだ。

 これらのソフトは、日本では2013年に提供開始する。日本での価格は米国での価格と大差はないが、米国よりもシンプルに分かりやすい料金体系に整備されるだろう。