テーブルの上に並んだ数台のスマートフォンとタブレット。隣り合うスマートフォン同士(またはスマートフォンとタブレット)の画面に同時に触れ、つまむ(ピンチイン)動作をすると、複数のスクリーンが一つの大きなスクリーンとなって動画を表示し始める。スマートフォンを1台取り外すと、取り外したスマートフォンには画像が写らなくなる。そのスマートフォンを別のスマートフォンの隣に置き、指でつまむと、その場所でスクリーンの一部となり動画を表示し始める――。まるで、魔法を見ているような気分になる。
この「Pinch」(動画1)を開発したのが、東京工科大学 メディア学部 准教授 太田高志氏の研究室だ(写真1)。太田氏らはこれまでにもマルチスクリーンをテーマにしたメディアアートを制作してきた。Pinchの仕組みと、マルチスクリーンの可能性について太田氏に聞いた。
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Pinchとは。
複数のスマートフォンやタブレットを、指でピンチインすることで連続したスクリーンにできるプラットフォームです。私の研究室の大学院生だった田中潤君の研究として作成したものです。動画を表示するのは応用例の一つで、様々な可能性が考えられます。
例えばこのアプリは、指で触れると波紋が広がり、連結した隣のスマートフォンの画面にも広がっていきます(写真2)。指で二つのスマートフォンをつまむと二つの画面がつながり、はずむボールが隣の画面に移動していくアプリもあります(写真3、次ページの動画2)。
ゲームにも応用できます。このゲーム「Chumam(ちゅまむ)」(写真3、次ページの動画3)は、画面上の道をキャラクターが動いていきます。進行方向にスマートフォンを置いてピンチインで連結していきます。キャラクターが行き止まりにならないよう、長く動かすとスコアが上がります。
このように様々な可能性が考えられますので、我々の研究室だけでなくプラットフォームとして、多くの方に使っていただき、共同研究ができればと考えています。また現在はiOSのみですが、Androidなど他のOSにも移植していただける方がおられれば歓迎します。