携帯端末向けマルチメディア放送(モバイルキャスト)事業者のmmbi。スマートフォン向けに新たなメディアの市場開拓を目指し、2012年4月にサービスを開始してから約半年が経過した。「NOTTV」というブランドを打ち出し、対応端末がそろってきた今夏以降が、同社にとって本格的な勝負の時となる。どのようなメディアを目指し、今は何合目まで達しているのか。二木社長に現状と今後について聞いた。

(聞き手は河井 保博=日経コミュニケーション編集長、取材日:2012年9月6日)

「NOTTV」のブランドで月額420円のスマートフォン向け有料放送を開始して半年たつが、状況はどうか。

二木 治成氏
写真:新関 雅士

 9月初旬の時点で15万加入まできた。サービス開始時点での対応端末は2機種だけだったが、この夏モデルで7機種に増えた。さらに秋には10機種になる。サービス開始から1年で100万加入という目標に向けて、ここからペースを上げていくつもりだ。

対応端末の出荷台数に対する割合として、15万加入はどの程度か。

 対応端末の台数についてはNTTドコモの数字なので、我々からは言及できない。ただ、サービス開始後1年での目標としている100万加入は、出荷台数を300万台と考えて、その3分の1が加入しているという想定の数字。現時点では、諸々の事情を鑑みれば、まずまずといったところだ。

サービス開始から1年で100万加入という目標は変えないか。

 変えるつもりはない。今の15万加入という数字は少なく見えるかもしれない。スマートフォンの市場規模をイメージすれば、なおさらだ。しかし、対応端末が少なく、関西地方などがカバーエリアに入っていなかったことを考えれば、それほど悪い数字ではないと思っている。

 そして、これからは状況が変わる。対応端末は、この秋で10機種になり、今後も新しいモデルの発表に伴って対応機種が増える。例えば夏モデルの「MEDIAS X N-07D」(NECカシオモバイルコミュニケーションズ製)が出荷された時には、mmbiの加入者が急増した。ユーザーに受けがいい端末でのモバイルキャスト対応が進めば、加入者の増加ペースはぐんと上がっていくはずだ。

対応端末が増えれば自然に加入者も増えると。

 もちろん、端末だけではない。重要なのは、サービスの認知度を高めて加入を促すことと、魅力的なコンテンツを提供して視聴を継続してもらうことだ。併せてサービスエリアの拡充も進める。

 認知度については、サービス開始後の第1四半期、第2四半期でロケットダッシュのために、コストを集中投下してNOTTVのブランドを展開した。そして今度は、継続してもらうことに重点を置こうとしている。そのために重要なのはコンテンツ作りだ。

コンテンツについては、どのようなところに力を入れているのか。

 まず、いつでもどこでも見られるテレビとして、“今”を伝えられること。24時間ニュースなどがそれに当たる。音楽やスポーツ、BSやCSの人気番組、災害情報などもある。

 もう一つはオリジナルのコンテンツだ。「シニカレ」や、「踊る大捜査線」シリーズの最新続編など、オリジナルのドラマが代表的だ。ドラマ以外でも、例えばアイドルグループのAKB48の番組などがある。

それらのコンテンツで、モバイルキャストらしさは、どんなところか。

 従来の放送とは、コンテンツの作り方や配信の仕方が違う点だ。一言にまとめると、「インターネット的な発想をテレビの品質で」ということになる。

 一例がソーシャルメディアの活用だ。番組中にTwitterでコメントや投票を受け付けるようなものがある。AKB 48の番組など、ソーシャルメディアを通じて視聴者参加型で番組を作っているものもある。

 コンテンツ配信の違いでは、ドラマなどのシフトタイム視聴が挙げられる。夜中などに端末にコンテンツを配信しておいて、あとから視聴できる。生年月日、血液型などを入力して内容を確認できる動画付き占いなどもある。これらはファイルの配信(ファイルキャスティング)で実現している。