IFRS(国際会計基準)の設定主体であるIASB(国際会計基準審議会)の上位組織であるIFRS財団は2012年10月15日、アジア・オセアニア地域リエゾン・オフィス(サテライトオフィス)を東京・大手町に開設した。英ロンドンに本部を置くIFRS財団・IASBが、サテライトオフィスを設置するのは世界初だ。

 日本は2011年2月、中国との競合の末に東京への誘致に成功した経緯がある(関連記事:初の海外進出先は東京に決定、IFRS財団が評議員会を開催)。初代オフィス・ディレクターに就任した竹村 光広氏に、サテライトオフィスの役割や今後の計画などを聞いた。

(聞き手は島田 優子、田中 淳=日経コンピュータ


IFRS財団 アジア・オセアニア地域リエゾン・オフィス オフィス・ディレクター 竹村 光広 氏
IFRS財団 アジア・オセアニア地域リエゾン・オフィス オフィス・ディレクター
竹村 光広 氏

リエゾン・オフィスの役割は。

 主にアジア諸国でのIFRSの適用を支援するのが大きな役割だ。IFRS財団やIASBの本部はロンドンにある。このため、IFRSに対して「EU(欧州連合)中心」とのイメージを持つ人もいるようだ。

 リエゾン・オフィスの設置は、アジア・オセアニア地域に対して「IFRS財団が根を下ろして活動する」というコミットメントとなる。アジア・オセアニア各国のステークホルダー(利害関係者)と交流を持ち、協力して、基準の設定にも各国から参加してもらいたい。

 リエゾン・オフィスは、地域のコンタクトポイントやリサーチの中心としての機能を持つ予定だ。これまでアジア諸国がIASB本部にコンタクトをとりたい場合、半日程度の時差があった。東京ならば時差が少ないので、コミュニケーションを図りやすくなる。距離が近づくことで、アジア・オセアニア各国の規制当局や会計基準の設定主体とも話がしやすくなると期待している。

 オフィスには各国の会計基準設定主体からの出向者を受け入れる予定だ。新たな基準を作る前や基準の策定作業中に、各国の商習慣をリサーチして反映しやすくなるとみている。新たな基準を策定した後に適用状況を調査する「ポストインプリメンテーションレビュー」にも効果を発揮するだろう。

 IFRSは世界で統一した会計基準だが、アジア諸国の企業が同じ基準を利用した場合、商習慣の微妙な違いから結果が変わるケースもあり得る。リエゾン・オフィスにより、実際に利用したアジア諸国の意見を取り入れやすくなる。