英マイクロフォーカスといえばCOBOL開発ツール大手ベンダーとして有名だが、最近ではアプリケーションのテストツールや要件定義ツールなど他の製品分野でも注目される存在となっている。来日したケビン・ルースモア会長に、同社のビジネス戦略やCOBOL分野の現状、テストツールの市場動向などについて聞いた。

(聞き手は斉藤 栄太郎=ITpro


最近ではCOBOL関連以外のソフトウエアも多数扱っているが、主力製品は何か

英マイクロフォーカス会長 ケビン・ルースモア氏
英マイクロフォーカス会長 ケビン・ルースモア氏

 売り上げの面ではCOBOL関連製品が過半を占めており、中核となっている状況は以前から変わっていない。COBOLに関しては、特にこの2、3年は米マイクロソフトの統合開発環境であるVisual Studioに対応した「Visual COBOL」に力を入れている。

 Visual COBOLでは、Java VM上でCOBOLを動作させられるなど、従来より柔軟にCOBOLを扱えるようになっている。Visual Studioに加えEclipseからも利用できるなど、統合開発環境に慣れ親しんでいる若い開発者にも使いやすく、COBOL分野における「スキルを持った人が足りない」という課題を解決するのに役立っている。

 ただし、最近はCOBOL関連以外のソフトウエア分野にもかなり力を入れている。特に注力している分野は二つある。メインフレームから分散環境への移行など、企業が持つアプリケーション資産を有効活用するためのマイグレーション(移行)やモダナイゼーション(近代化)を実行するためのツール分野と、アプリケーションを様々なシナリオに基づいて自動テストするためのテストツール分野だ。

 前者については、「Micro Focus Enterprise Analyzer」という製品を提供している。一方、テストツール分野については、買収した米ボーランドのツール群が中心となっている。「Silk」シリーズのテストツールや要件定義ツールの「Caliber」、ソフトウエアの構成・変更管理ツールである「StarTeam」などの製品がある。

テストツールに関しては買収したボーランドブランドで販売し続けるのか

 買収した会社のプロダクトをどのように扱うのかという質問に対して、我々の事業戦略は明確である。「顧客に選択する余地を与える」というオープンな方針に基づいている。「特定のベンダーからすべてのプロダクトを買わなければならない」というような囲い込み(ベンダーロックイン)はしない。

 マイクロフォーカスからCOBOL製品を購入したからといって、開発に役立つ要件定義ツールやテストツールなどまですべて当社の製品でそろえて買わなければならないように押し付けることはない。あくまでも、「一緒に使うとより便利なテストツールなどを販売していますが、選択するかどうかは自由です」というスタンスになる。

 ボーランド製品については、製品ブランドとしてはそのまま生き続けることになる。既存のユーザーが世界中に多数おり、いきなり異なる製品名で出したりすると、多くのユーザーが継続性などの面で不安を感じるだろう。この分野については、ボーランドが長年にわたって築き上げてきたブランドイメージを大切にしたい。

 ただし、実際に製品を開発するに当たっては、可能な限り当社の別のプロダクトとの連携性や拡張性を高めるような努力は惜しまない。例えばテストツールの場合なら、テストの自動化ができる範囲をできるだけ広くするといった形での既存製品との融合を積極的に推し進めていく。

 実際に、Silkシリーズの最新製品(日本では9月発売)であるモバイルデバイス専用テスト自動化ツール「Silk Mobile」(関連記事:マイクロフォーカス、モバイルデバイス専用のテスト自動化ツールを発売)には、そうした考えのもと、様々なアイデアや成果が盛り込まれている。