米CA Technologiesでクラウド事業者に向けた事業ユニットの責任者を務めるAdam Famularo(アダム・フミュラロ)氏
米CA Technologiesでクラウド事業者に向けた事業ユニットの責任者を務めるAdam Famularo(アダム・フミュラロ)氏
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 米CA Technologiesは、これまでのエンタープライズ(ユーザー企業の情報システム部門)向けと並行し、新たにサービス事業者に向けた事業ユニットを立ち上げた。2010年に買収した米3teraのクラウド運用ソフト「CA AppLogic」(関連記事)をサービス事業者向けと位置づけ、サービス事業者向けに販売する。この事業ユニットの責任者であるAdam Famularo(アダム・フミュラロ)氏に、クラウド運用ソフトのすみ分けについて聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro

CA AppLogicはユーザー企業よりも事業者に向くのか。

 ユーザー企業が自社でプライベートクラウドを運用するためのソフトとしては、「CA Automation Suite」を用意している。スイート製品であり、仮想サーバーのプロビジョニング(配備)ソフト、サービスカタログ、運用プロセスの自動化ソフト---といった各種のソフトを組み合わせている。

 CA Automation Suiteの特徴は、ヘトロジニアス(異機種混在)環境で利用できることだ。ユーザー企業には、投資済みのサーバー資源がある。これらの資源を使ってプライベートクラウドを運用できる柔軟性が求められる。だから、稼働プラットフォームが豊富で、なおかつ複数ソフトのスイートという形で製品を提供している。

 一方で、CA AppLogicはスイート製品ではなく仮想サーバーのプロビジョニングやサービスカタログなど、クラウド運用の自動化に必要な各種の機能群をまとめて提供するソフトだ。対象とするサーバー仮想化ソフトも、主にXenServerに限る(2011年8月に出荷した最新版ではVMware ESXも利用できる)。一からクラウド環境を構築するケースに向いている。

 なお、AppLogicは、サーバー仮想化ソフト(XenServerやVMware ESX)をエンジンとして利用するソフトだが、これらが用意している管理ソフト(VMware vCenterなど)は利用せず、AppLogicがサーバー仮想化ソフト(エンジン)を直接制御する仕組み。あらかじめ複数のサーバー機にAppLogic(サーバー仮想化ソフトを含む)をインストールして利用する。

 CA Technologiesでは、ユーザー企業向け(プライベートクラウド構築向け)にはCA Automation Suite、クラウドサービス事業者向けにはCA AppLogicという形で、製品を住み分けている。

ユーザー企業はCA AppLogicを買わないのか。

 これまでの実績から見ても、ユーザー企業向けの販売は少なく、サービス事業者向けが多くを占めている。これを受けて、CA AppLogicについては、サービス事業者向けの販売に注力することにした。製品を売る相手がこれまでと異なるのだから、専用の事業ユニットが必要と判断したのだ。専用の事業ユニットによって、CA AppLogicの売上額が以前よりも伸びる。

 もちろん、ユーザー企業がCA AppLogicを購入するケースもある。例えば、CA Automation Suiteと組み合わせるケースだ。カタログ化されたシステム構成(Web3階層システムなど)をデプロイする機能をCA AppLogicに任せ、それよりも下の階層(インフラの配備など)をCA Automation Suiteにやらせる、といった具合だ。

ユーザー企業から見たCA Applogicの意義は何か。

 サービス事業者から見ると、クラウド運用の基盤としてCA AppLogicを採用することで、クラウド運用にかかるコストが減る。サーバー構成の変更にかかる時間も減る。サービス事業を提供するためのシステムを一から導入するのであれば、他のクラウド運用ソフトよりもCA AppLogicの方が優れているからだ。

 結果として、CA AppLogicを採用したサービス事業者は、顧客であるユーザー企業に対して、より安価に、より利便性の高いクラウド環境を提供できるようになる。ただし、ユーザー企業から見れば、契約しているクラウドサービスがCA AppLogicで動作しているかどうかは分からないことが多いだろう。

 ユーザー企業にクラウドサービスを届けるためにも、現在のCA AppLogicの理念は、サービス事業者の基盤を支えるクラウド運用ソフトの世界でナンバーワンになることと考えている。事業ユニットの新設のほかに、このための施策をいろいろと採っている。

そのほかのCA AppLogicのメリットは何か。

 CA AppLogicで利用できるサービスカタログを拡充するためのパートナエコシステムを構築している。例えば、CA AppLogic上でプロビジョニングできるサーバーのマーケットプレイスとして「Cloud Commons」というEC(電子商取引)サイトを運営している。

 Cloud Commons上では、CA Technologies製やサードパーティ製など、合計で30~35種類程度の商用製品を購入できる(ダウンロード購入できるものもあれば、販売チャネル経由で購入するものもある)。こうしたサーバー商品にインストールされているソフトウエアには、サービスデスク管理ソフト、データバックアップソフト、VDI(デスクトップ仮想化)ソフト、データ移行サーバーソフト---などがある。

■変更履歴
最初の質問に対するFamularo氏の回答で、第3段落の後に段落を一つ追加し、CA AppLogicについての説明を補足しました。[2012/10/29 21:15]