米Red Hatは2012年6月から、x86サーバーにインストールするだけでスケールアウト型の分散ストレージとして使えるようにするソフト「Red Hat Storage Server」を提供している。買収した米Glusterのソフトウエアである。同社でストレージ部門の責任者を務めるRanga Rangachari(サランガン・ランガチャリ)氏に、Red Hat Storage Serverの狙いと概要を聞いた。

(聞き手は日川 佳三=ITpro


Red Hat Storage Serverとは何か。

Ranga Rangachari氏
Ranga Rangachari氏

 一言で言えば、スケールアウト型のNAS/オブジェクトストレージを、汎用のx86サーバーで実現するソフトウエアだ。これまでのエンタープライズ(企業向け)市場には無かったアプローチだ。スケールアウト型NASソフトウエアの市場は、グローバルで70億ドル。ここへ打って出る。

 ストレージは、これまでのRed Hatにとって足りていなかった要素だ。OSや各種ミドルウエア(JBossなど)といった、IaaS/PaaS構築用のソフトウエアスタックの中で、ストレージ構築ソフトだけが欠けていた。これを埋めるものとなる。

 市場調査によると、ユーザー企業におけるクラウドへの投資額の40%はストレージだ。さらに、非構造化データが急増している。こうした中、ストレージのコストを大幅に下げることができるのが、Red Hat Storage Serverだ。

なぜソフトウエアとして提供するのか。

 過去10年間は、サーバーの変革の時期だった。Linuxとx86サーバーが、RISC UNIXにとって代わった時代だった。今後の10年間は、ストレージの変革の時期だ。オープンソースとx86サーバーが、ハードウエア一体型の既存のストレージ機器を置き換えることになる。

 もちろん、現在のストレージ機器の多くも、x86サーバーを使って構築されている。しかし、こうしたアプライアンス製品は、ハードウエア一体型の製品であるために、構成の自由度がない。さらに、ソフトウエアにオープンではない独自技術を使っているため、ロックインの危険がある。

 一方で、ソフトウエアであるRed Hat Storage Serverの場合、ハードウエアの選択肢が広いので、ハードウエアコストを安価に済ませることができる。また、ソフトウエアはオープンソースを使ったオープン技術であるため、ベンダーにロックインされることもない。

 コストを比較すると、ざっくり言って既存のストレージ製品の3分の1以下になる。Red Hatの試算では、Red Hat Storage Serverを使って構築したストレージがハードウエア込みで1Gバイト当たり0.3ドルで済むのに対し、既存のストレージ製品では1Gバイト当たり1ドルかかる。

 価格以外にも、ソフトウエアとして提供する大きなメリットとして、サーバー環境の種類を問わない点が挙げられる。例えば、物理サーバー、仮想サーバー、クラウドサービス(IaaS)など、インストールするサーバーの種類を問うことなく、これらのサーバーを混在させて利用できる。