「売り上げを伸ばし利益を大きくしないと、勝負したいときに勝負ができない」。コニカミノルタホールディングスの松崎正年社長はそう語る。写真フィルムとカメラで一時代を築いたコニカとミノルタが経営統合して誕生した同社だが、今や複合機やデジタル印刷機が主力事業だ。IT企業を相次いで買収するなど、攻めの経営を貫く松崎社長にその戦略を聞いた。

2012年3月期の業績は、売上高が7679億円、営業利益が403億円と堅調でした。どのような事業構造なのですか。

1976年3月に東京工業大学大学院総合理工学研究科修了、同年4月に小西六写真工業(現コニカミノルタホールディングス)に入社。97年11月にコニカ 情報機器事業本部カラー機器開発統括部第二開発グループリーダー、99年6月にオフィスドキュメントカンパニー システム開発統括部長。2005年4月にコニカミノルタホールディングスの執行役、06年4月に常務執行役、同年6月に取締役常務執行役に就任。09年4月より現職。1950年7月生まれの61歳。(写真:栗原 克己)

 複合機やデジタル印刷機の事業が全売り上げの70%を占めています。情報機器事業と言っています。二つめが、もともと持っていた光学技術や材料技術を使ったコンポーネント事業です。例えば、液晶パネルの視野角拡大用のフィルムやハードディスクドライブ用のガラス基板といったものです。そして三つめがヘルスケア事業。レントゲンフィルム時代からの事業で、医用画像情報システムなどを提供しています。

 実は、情報機器事業は国内の売り上げが20%に満たず、ほとんど海外です。特に欧州が売り上げの40%を占めています。円高は厳しいですが、現地通貨ベースで過去最高の売り上げでした。欧州債務危機の影響も受けましたが、デジタル印刷機が貢献してくれました。デジタル印刷機は市場自体が新しく成長の余地があります。

 業績への貢献では、液晶パネル用のフィルムの販売が堅調だったことも大きい。何年も前から戦略的に顧客に訴求し、ようやく去年から採用されるようになりました。他社のシェアを奪い、既に利益面でも貢献していますよ。

成長してこそリスクを取れる

今の中期経営計画で2014年3月期に売上高1兆円以上を目指すとしていますが、現状では達成が難しくありませんか。

 持続的に企業が成り立っていくためには、利益を大きくしていかなければなりません。そうでないと、勝負をしたいときに勝負ができません。取れるリスクの大きさは、利益の規模で決まってきますからね。ですから売り上げを伸ばさないといけない。今はその姿勢を変えるつもりはありません。

 実は、この会社は放っておくと利益率だけを大事します。まだ100億円ぐらいの事業でも「もっと伸ばせ」と言うと「利益率が10%あるからいいじゃないですか」といった反応が返ってくるのです。もちろん利益率を大事にすることで、財務体質はかなり良くなりました。だけど、企業のレベルをもう一段階上げるには、規模拡大のモードに入らないといけない。「リスクを取れ」と言い続けなければなりません。

情報機器事業は海外比率が高いとのことですが、アジアなど新興国開拓も進んでいるのですか。

 前期、新興国で売り上げが10%伸びました。でも私は不満です。もっと伸ばさなければいけなかったのです。15%、20%の伸び率が必要です。新興国、例えば中国ではGDP(国内総生産)が8%以上伸びているわけですから。

 もちろん、いろいろな施策を打っています。例えば、シンガポールにASEAN(東南アジア諸国連合)地域統括会社を置きました。デジタル印刷機などの販売強化に向けて、販売支援や保守サービス、トレーニングなどを担います。中国ではシェアの面で当社は良いポジションにいますが、それ以外のアジアはこれからです。

デジタル印刷機はともかく、複合機は国内でシェアが低迷しています。海外ではいかがですか。

 複合機については、コニカとミノルタが統合したときにカラーに集中する戦略を採りました。それが功を奏して、カラーの複合機のワールドワイドでのシェアは、日本を除くと2位。つまり、海外の販売会社はカラー複合機でトップシェア争いをしているわけです。

 一方、日本市場では販売チャネルを人的に強化してこなかったこともあり、圧倒的に弱小です。当社のシェアは7%ぐらいです。

 ただデジタル印刷機は、自ら市場開拓してきたこともあり、トップの富士ゼロックスに対しシェアを詰めつつあります。実は海外では、カラーのデジタル印刷機でトップシェアになりました。米国のゼロックスが絶対的な存在だったのですが、2011年度にわずかの差ですが逆転しました。