写真●米Embarcadero TechnologiesのDavid Intersimoneデベロッパ・リレーションズ担当副社長。缶のペプシネックスを飲みつつ語った
写真●米Embarcadero TechnologiesのDavid Intersimoneデベロッパ・リレーションズ担当副社長。缶のペプシネックスを飲みつつ語った
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 米Embarcadero TechnologiesのDavid Intersimone(デビッド・インターシモーネ)デベロッパ・リレーションズ担当副社長が、2012年9月4日に開催される第23回エンバカデロ・デベロッパーキャンプに合わせて来日し、日経ソフトウエアの取材に応じた。昨年投入した「RAD Studio XE2」の売れ行きは「very well(すごくよかった)」とのこと。クロスプラットフォーム化路線が成功して、会社全体が自信を深めているようだった。

(聞き手は原田 英生=日経ソフトウエア

先日、RAD Studio XE3の記事を書いた。新版「XE3」のWindows 8対応は途上のように思えるがどうか。

 RAD Studio XE3のWindows 8対応については、これが開始点(start point)だと考えてほしい。VCL(Visual Component Library)とFireMonkeyの「スタイル」という機能を使って、既存のアプリケーションを簡単にWindows 8スタイル、Windows 8ルックにできるようにした。これはMetroアプリケーションではないが、コンパクトで高速なネイティブコードで、Windows XPでもVistaでも7でも動き、タッチ対応のハードウエアを活用できる。アプリケーションのWindows 8対応を急ぐ開発者に役立つものだ。

 さらに、Metroアプリケーションの開発が、RAD Studio XE3の一部である「Prism XE3」でできるようになる。ARMプロセサ対応のコンパイラも準備している。ARM対応については、iOS、Androidへの対応も含めて開発を進めている。これらは、完成したらすぐに、RAD Studio XE3のユーザーに提供する。ただ、Windows RT(ARM対応のWindows)を搭載したハードウエアがまだ見えていないので、もう少し時間がかかると思ってほしい。

C++Builderの64ビット対応はどうなったか。

 Delphiに続いてC++BuilderでもWindowsの64ビット開発ができるようにする。XE3の初期出荷版には入っていないが、これもやはり、完成次第XE3ユーザーに配布する。年内にはできると思う。

PHPの開発ツールである「RadPHP」は「HTML5 Builder」に名前が変わった。なぜか。

 もはやPHPだけではないからだ。サーバーアプリケーションはこれまで同様PHPで書くが、HTML5、CSS、JavaScriptを使ってクライアントアプリケーション、モバイルアプリケーションの開発ができる部分が重要になった。一つのコードでiPhoneでもNexus(米GoogleのAndroidハードウエア)でも動く。「Mobile Studio」というパッケージも投入するけど、それは明日のお楽しみだ。とにかく、これからもRAD Studioの機能はどんどん増えるよ。

MacやiPhoneでは開発ツールが無償で提供された。開発ツールは無償のものが標準になったのではないか。

 本当に無償だと言えるだろうか? iOSのアプリケーションを作って配布するには年に99米ドルを払ってデベロッパ・プログラムの会員になる必要がある。Windows 8のMetroアプリケーションも同様だ。また、iOSのソフト開発にMacのハードウエアを買わなければいけないというのも、人によっては大きなコストではないだろうか?

 米Microsoftも米Appleも開発ツールを提供しているが、当たり前の話だけれど、MicrosoftはMac OS XやiOSをサポートしないし、AppleはWindowsをサポートしない。WindowsとMacの両方を気に掛けるクロスプラットフォームの開発ツールは、彼らからは出てこない。でも世の中の企業の多くは、すごくたくさんの異なったピースを気にかけなければならない。

 RAD Studio XE3はそういう企業の開発者をサポートする。一度コードを書けば、どんなデバイスでも使える。WindowsとMac OS XとiOSのネイティブコードを出力できる。特定のオペレーティングシステムやデバイスの囚人になる必要はない。私たちの開発ツールは、ソフトウエア開発者に最大の選択肢を提供している。RAD Studioはクロスプラットフォームの開発ツールに生まれ変わった。もはや「Windows用の開発ツール」ではない。

Davidにはもう何度もインタビューしたような気がする。

 私がカレッジで初めてプログラミングをしてから、もう43年になる。コンピュータと開発ツールがあれば、それが一番面白い。「何でもできる!」と思えるのが素敵だ。iOSとかAndroidとかWindows 8とかどんどん新しいものが出てくるけれど、変わらないことも多い。ルック&フィールは変わるけど、開発者が使うプログラミング言語は変わっていなかったりする。BASIC、Pascal、C/C++は、その先祖も含めて、とても長い歴史を持つ言語だ。Javaだってもう17歳くらいなんだから! ソフトウエア開発に使うメタファーやマッスルメモリー(開発者の筋肉が覚えている記憶)もあまり変わらない。 

もしEmbarcaderoがなかったら、Pascalは死んでしまっただろうか。

 Free Pascalなどもあるから、我々が唯一のPascalベンダーとは思わない。言語は死んでしまうわけじゃなくて、単に停止しているだけなんだ。でも、生き続けること(keeping alive)がプログラミング言語にとって重要だというのは正しい。言語に新しい機能を付加し、新しいフレームワークを提供して、新しいハードウエアに対応する。私たちはそのためにすごくたくさんの投資をしている。