スマートフォンの年間販売台数目標として1300万台を掲げるNTTドコモ。通信モジュールの契約を除いても約5000万の加入者を抱える同社にとって、従来型携帯電話からスマートフォンへの移行を促す手段の一つが「ドコモクラウド」だ。ドコモクラウドは(1)「パーソナルクラウド」、(2)「ビジネスクラウド」、(3)「ネットワーククラウド」の三つが定義されている。この中で先行してサービスが提供されている(3)を中心にその現状と戦略を聞いた。
試験サービス中の「通訳電話」について教えてほしい。
西本氏:通訳電話は昨年11月から試験サービスを開始し、今年の6月から規模を拡大して実証実験している。サービスとしてはネットワーククラウドに位置付けられる。
サービスの概略は通話中の音声を自動的に翻訳して相手に伝えるもの。日英翻訳の場合は、例えば「こんにちは」と話すと、通話相手には「Hello」と訳された音声が聞こえるサービスを提供する(写真1)。
回線交換が必須のサービスとなるのか。
西本氏:音声を使う場合はそうだが、使い方によってはパケット交換のみでも利用できる。例えば外国人観光客の応対ツールや窓口のサポートツールとして、1台のタブレットに表示されたテキストを見ながらやりとりするといったことも可能だ。
利用に当たっては、現状は「spモード」もしくは「mopera」といったNTTドコモのISP契約が必要だ。「将来的にも回線と紐付けてずっと提供していくのか」という議論はあるかもしれないが、現状はNTTドコモの契約者に対して提供するサービスという位置付けだ。
翻訳エンジンは自社開発なのか。
西本氏:翻訳エンジン自体は外部の技術を活用している。通訳電話は、回線交換経由で入ってきた音声の認識、認識した音声をテキストに変換する技術、テキストを機械翻訳するエンジン、翻訳したものを音声にする音声合成で構成している(写真2)。いずれのエンジンも独自ではなく、外部の技術を組み合わせて提供している。
通訳電話はリアルタイム性を問われると思うが現状は。
的場氏:音が出るまで2~3秒程度。これ以上遅いとコミュニケーションが成り立ちにくいということがあるかもしれないが、試験サービスを使っているユーザーの方からは「思ったよりレスポンスが速い」というコメントをいただいている。
試験サービスの規模は。
西本氏:前回の試験サービスは2011年11月から2012年3月まで1000人規模で実施した。今回は2012年6月1日からは1万人規模で実施している。前回の検証では、特に中国語のニーズが高いことが分かった。中国人観光客とのコミュニケーション用途などだ。