米NComputingは、デスクトップ仮想化ソフトやシンクライアント端末など、デスクトップ仮想化に関連した製品を開発している新興ベンダー。米Citrix Systemsのミドルウエアと組み合わせて使うシンクライアント端末ハードウエア「Nシリーズ」の発表に合わせて来日した同社CEOに、シンクライアントの現状と今後を聞いた。
デスクトップ仮想化の動向は何か。
シンクライアント(画面情報端末)の価格が下がったことだ。パソコンの価格はあまり変わっていないが、シンクライアント端末の専用ハードウエアの価格が、以前の3分の1になった。これが、デスクトップ仮想化における大きな変化だ。
背景には、デスクトップ仮想化にかかる費用のうち、シンクライアントが占める割合が大きい、という状況がある。
1台当たりの費用は、ミドルウエアやサーバー/ストレージなどを含めたシステム全体で1000~1200ドル。このうち、シンクライアントには400~600ドルかかっている。
つまり、シンクライアントにかかるコストを削減できれば、デスクトップ仮想化システム全体のコストも大きく減らすことができる。
なぜ端末の価格が下がったのか。
従来のシンクライアント専用機は、中身がx86ベースのパソコンだった。一方で、今のシンクライアント端末は、SoC(System-on-a-chip)チップを使った専用のハードウエアだ。
シンクライアント機能やグラフィックス処理機能をSoCに搭載し、部品点数を減らし、基盤をシンプルにした。これによって価格が下がった。1台当たり200ドル程度からという価格で購入できる。
端末価格が下がったことのインパクトは何か。
シンクライアント選びにおける競争のゲームそのものが変わった。
「専用機とパソコンのどちらを選べばよいのか」という問題は、長らく議論の対象だった。パソコンは専用端末よりも管理コストが大きいが、専用機は価格が高いので、結果として専用端末はニッチであり続けた。
SoCによって、この構図が変わった。専用機が圧倒的に安くなったことによって、これまでのニッチからメインストリームへと位置付けが変化したのだ。
安価なシンクライアント専用機を開発/提供しているのか。
そうだ。
NComputingの製品は、大きく、SMB(中小企業)向けと大企業向けの二つに分かれる。
SMB向けには、デスクトップ仮想化に必要なすべての製品を提供している。つまり、デスクトップ仮想化ソフトとシンクライアント(専用機など)を用意している。これらの最大の特徴は、RDPやICAのような一般的なプロトコルではなく、SMB向けに開発した独自の画面情報端末プロトコルを使っていることだ。
SMB向けに独自方式のサーバーミドルウエアを開発する一方で、大企業向けにはCitrix Systemsのサーバーミドルウエア(XenDesktop/XenApp)が適していると考えている。こうした理由から、XenDesktop/XenAppのためのシンクライアント専用機を提供している。
今回、新製品として提供するSoCベースのシンクライアント専用機が、まさに大企業向けである。XenDesktop/XenAppのクライアント機能(Citrix Receiver)に特化している。この製品を採用すれば、デスクトップ仮想化にかかるコストが減る。
新製品の概要は。
2モデルを用意した。タスクワーカー向けの下位モデル「N400」と、ナレッジワーカー向けの上位モデル「N500」である。いずれも外部ディスプレイ解像度は1920×1080ドットで、動画再生機能も備える(N400は720p、N500は1080p)。N500では無線LANも利用できる。
いずれも、x86ベースのパソコンとは異なり、基盤がシンプルだ。ヒートシンクも存在しない。SoCチップはARMアーキテクチャをベースとしており、消費電力はチップ単体で2W未満、全体でも5W未満と小さい。
日本国内ではエム・ピー・テクノロジーズ(MPT)が取り扱う。