900MHz帯のプラチナバンドを獲得できないまま、2012年3月15日に最大75Mビット/秒のLTE(Long Term Evolution)サービス「EMOBILE LTE」を開始したイー・アクセス。急増し続けるトラフィックへの対策、スマートフォンの投入など、今後の成長戦略について、エリック・ガン社長に聞いた。

900MHz帯(プラチナバンド)は残念ながら獲得できなかった。

エリック・ガン氏
写真:新関 雅士

 とても残念な結果だ。審査に関しては、MVNO(仮想移動体通信事業者)計画の評価が他社と同程度だったことには不満がある。我々は50社近くのMVNOから「もし900MHz帯を獲得したらサービスを提供する」という確認書をもらうところまでやった。他社はそこまではやっていなかったはずだ。

 ユーザー数(周波数の逼迫度)が最終的な評価に影響した点も、新興事業者である我々からすると不公平感は否めない。それでも、自信を持っていた移行計画は高い評価を得た。700MHz帯の獲得に向けて、900MHz帯のために苦労した点は無駄にはならない。

700MHz帯は3枠だから、ソフトバンクモバイル以外の3社で獲得するだろうと見られている。次は獲得できる可能性が高そうだ。

 確かに獲得できる可能性は高い。それでも、移行計画は改めてしっかり作る必要がある。特に、3事業者が同じ700MHz帯を獲得するのだから、移行費用も3社で負担することになる。分担すれば、移行費用の負担を軽くできると考えている。いずれもLTE(Long Term Evolution)を視野に入れているから、端末のチップセットも調達が楽になるのではないか。

ただ700MHz帯は、すぐには使えない。

 700MHz帯を獲得したとして、サービスを始められるのは早くても2015年頃だろう。それとは別に見込まれている1.7GHz帯の追加割り当てはさらにその先。だから当面は、いま持っている周波数で頑張るしかない。

具体的には、どうしていく考えか。

 まずはLTEの展開を急ぎ、下り最大7.2Mビット/秒のHSPA(High Speed Packet Access)を利用しているユーザーを、できるだけ早くLTEに移行するよう促す。LTEはHSPAなどの3Gに比べると、周波数の利用効率は約3倍。それでユーザーをたくさん収容できるようにしていけば周波数に余裕ができる。

 そうすると、いまHSPAで使っている周波数帯を再調整できる。空けた領域でさらにLTEサービスを提供していけば、さらに多くのユーザーを収容できる。これから2年間は、この取り組みを少しでも早く進めていくことが一番の課題だ。

3月15日に、いよいよEMOBILE LTEのサービスを開始したが、ユーザーの反応はどうか。

 かなり調子がいい。もともと2011年度末の契約者数は385万としていたが、最終的にそれを400万に上方修正した。LTEはわずか2週間分しか影響しないが、それでも400万達成に効いたと思えるほど反応は良好だ。

 しばらく前にLTEの開始を発表しために、それを待って下り最大42Mビット/秒のDC-HSDPA(Dual Cell-HSDPA)を見送ってきたユーザーが多くいる。それが今の勢いに結びついているようだ。サービスを開始してそれほど時間がたっていないが、トラフィック状況を見ると、1カ月で通信量が5Gバイトを超えそうなほどの使い方をするユーザーも多い。

 とはいえ、LTEサービスの契約者のうち7割くらいは当社のサービスを新規に契約するユーザーだ。既存サービスからの移行は3割程度しかいない。今後はもっと、既存のHSPAユーザーのLTE移行を促すつもりだ。

移行を促す施策は?

 機種変更にかかる費用の一部を負担することだ。既にしばらく前から、機種変更時にユーザー当たり1万円まで契約解除料を割り引くキャンペーンを展開している。この施策で、機種変更するユーザーは増えた。通常は機種変更ユーザーは四半期に5万人くらいしかいなかったが、キャンペーンを始めた第3四半期には2倍の10万人以上に上った。LTEについても、こうした機種変更の形で移行を促していく。