多様化が進むAndroid端末。業務用に堅牢性を重視したAndroid端末も登場している。こうしたAndroid端末との組み合わせに適したGIS(地理情報システム、Geographic Information System)を開発しているのがベンチャー企業のギョロマンだ。既に林野庁などに納入実績がある。さらに同社は森林の放射性物質の除染作業などの支援を目指し、放射線線量計とAndroid端末を組み合わせた展開を図っている。同社代表取締役社長の福元大策氏に聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=ITpro

Android端末とGISを組み合わせるようになった経緯を教えてください。

ギョロマン代表取締役社長 福元大策氏
ギョロマン代表取締役社長 福元大策氏

 以前勤めていた会社で社内のベンチャー企画として、空間GIS、つまり時間情報を扱える地理情報システムの技術責任者をしていました。その後GISをもっと使い勝手のよいものにすることを目指し、2006年に起業しました。

 それまでGISは敷居の高い技術でした。お金もかかるし特殊技能が必要で、さらに利用する側が一生懸命に勉強しないと使えない、というのが一般的な考え方でした。とはいえ所詮はITソリューション、所詮はツールです。ユーザーフレンドリーでオフィスソフト並みに使えないと意味がないと考え、独自でエンジン開発から進めてきました。

 そうした中で、オオワシなどの絶滅危惧種の生息地などをマッピング情報といっしょに管理できる希少動植物データベースや、国が管理する国有林の現地情報を収集するサブシステムを林野庁に収めるなどして実績を積み上げてきました。

 現在「ギョロモバイルAD」という自社開発のソフトウエアでAndroidを対象にモバイルGISを提供しています。一つ前の「ギョロモバイル」ではWindows Mobileを搭載するPDAを対象にしていました。ただ当時、いずれPDAの市場は消えるだろうと考えており、モバイル機器としてはAndroid、iOS、Windows Phoneという選択肢が見え始めた時期でした。そのなかでハードウエアの多様性を考えたとき、多くのメーカーが様々な目的に合ったAndroid端末を出してくるだろう、という読みをしました。そこでいまから1年半ほど前に、Android版のモバイルGISの開発に着手しました。

依頼を受けて開発したのですか?

 完全に独自です。そもそも最初のギョロモバイルの開発時は、当時市販されていたPDAを使うGISがとても使いにくく、現場の人が簡単に使えるようなものを作りたいという気持ちから自社製品として開発しました。

 ただし、お客さんからは多くのノウハウを得ています。前作のギョロモバイルは2年ほど現場で徹底的にたたいてもらいました。技術者の役割はやりたいことを形に変えることであり、実際にやりたいことは現場の方がよく知っている。技術者が「これは便利だろう」と思って物作りをするスタイルをなるべくやめたかった。未完成でもいいから「こういうコンセプトの製品です」とまず出して、それを実際に現場で徹底的に使ってたたいてもらい、フィードバックを受けてさらに良くしていく、という開発スタイルを取っています。

 こうしたスタイルで高い評価をいただいてきました。Android端末でも同じことができるものを用意するべきだと思って開発を始めました。Android端末はPDAよりもできることがはるかに多い。パフォーマンスが高いだけでなく、カメラ、加速度センサー、GPSなどセンサー類も数多く付いている。これをきっかけにできることを盛り込み、新しいものを提供しようというのが開発の経緯です。

利用するAndroid端末の条件を教えてください。

 そもそも森林などで使ってもらうもので、落としたり、水たまりがあったりが当たり前の世界です。ハードウエアとしては耐衝撃性や防水が必須になります。そして強力なバッテリー性能も求められます。バッテリーが途中で交換できないと、そこで何もできなくなってしまう。

 また、現場ではディスプレイサイズが10インチのものを持ち歩くのは現実的ではありません。山の中を歩くときはリュックを背負ってフル装備の状態で、さらにいろいろなものを持ったうえで、追加でモバイル端末を持つことになります。操作で両手を奪われる10インチタイプは、現実的ではありません。かといって4インチタイプのスマートフォンだと、現場には年配の人も多いため、文字などが見づらく、ボタンも押しにくい。

 半年くらいかけて現場にヒアリングして、現場に一番合っているのは7インチタイプとの結論に達しました。片手で持つことができて、画面サイズも十分です。情報端末として十分な情報量を表示できる。現場の方の業務スタイルからハードウエアを選定していくと、パナソニック システムネットワークスの「BizPadシリーズ」の7型液晶モデルが最適でした。そこですぐにコンタクトを取り、標準ハードウエアとして採用しました。