今も裁判が続くスルガ銀の勘定系プロジェクトのように、当初の目標を達成できない失敗プロジェクトは、相変わらず減っていない。なぜ、危機プロジェクトは減らないのか。危機に陥ったITプロジェクトの“火消し”を数多く成功させてきた「クライシスマネジメント」のスペシャリスト、拜原正人氏(クロスリンク・コンサルティング エクゼクティブコンサルタント)に、最近のプロジェクトの危機要因と、プロジェクトマネジャーがとるべき行動指針について聞いた。

(聞き手は、平田 昌信=ITpro


発注者も含めたプロジェクト全体の統合マネジメントは、ベンダーの仕事ですか。

クロスリンク・コンサルティングの拜原 正人氏
クロスリンク・コンサルティングの拜原 正人氏

 以前は、ベンダーのマネジャーがやっていた。昔はいたんですよ。買って出る人が。もっとも、以前はシステムがあまり複雑ではなくて全体を見通せるから、可能だった。システムが複雑になった今、それは非常に難しくなってる。実際、今は誰もやりたがらない。

 そうすると、発注者側で、マネジメント出来る人を作らないといけない。そうしないと、自分たちのビジネスが成り立たないということになる。CIO(最高情報責任者)とか、そういう人が必要になる。

 実際、最近は、発注者側にすごい人がいて、プロジェクト全体をマネジメントするケースも多い。発注者と受注者のどちらがプロジェクト全体を主導し、マネジメントするのかは、ビジネスモデルによって変わってきます。

 今後は、外部の「コンストラクション・マネジャー」が発注者の側に立って、プロジェクト全体をマネジメントする「コンストラクション・マネジメント」の形態も増えるでしょう。コンストラクション・マネジメントは、元々建築業界で発展したマネジメント形態です。

 スルガ銀行と日本IBMの裁判で日本IBMが負けましたが、もし、スルガ銀行側に強力なコンストラクション・マネジャーが付いていて、コントラクション・マネジャーが、発注者の立場で最適なパッケージを選定していたら、結果は違っていたでしょう。

 コンストラクション・マネジャーは、日本のIT業界ではまだ多くはありませんが、今後は増えていくと思います。