Windows XPが登場したのは2001年。そのサポート終了まで、あと2年を切った。だが、広く普及したWindows XPは、今でも企業内のクライアントとして根強く残っている。こうした企業ユーザーに残るWindows XPについて、どうしていく戦略なのか。米Microsoftでエンタープライズ向けWindowsのマーケティングを担当するPieter Uittenbogaard氏に話を聞いた。

(聞き手は根本 浩之=ITpro



ユーザーのパソコン利用環境の変化について、どう考えているか?

Pieter Uittenbogaard氏
Pieter Uittenbogaard氏

 Windows XPが登場した10年前と比べて状況は大きく変わっている。あの頃はパソコンの80%がデスクトップで、20%がラップトップという状況だった。今では、この割合が逆転して、ラップトップが60%、デスクトップが40%になっている。このことに象徴されるように、デバイスの使い方で大きな変化が起きている。

 米国の調査で、半数以上の人が複数のデバイスをインターネットに常時つないでいるという結果が出ている。そして、どこでもどんなデバイスからでも、いろんな形で作業できるのを望むようになってきた。エンドユーザーが身につけたノウハウを仕事で駆使するコンシューマライゼーションの動きが登場している。こうした中では、企業内でのセキュリティやコンプライアンスがますます重要になる。

 XPが登場したときは、パソコンの使い方を劇的に大躍進させるものと思われた。だが、こうした新しいソリューションをマイクロソフトが提供していくには、Windows 7やOffice 2010といった製品が重要となる。実際にWindows 7は既に非常に大きな成功を収めており、エンドユーザーが使いやすいだけでなく、企業のユーザーにとってはセキュリティや管理性といった面で好評を得ている。

ユーザーの中には、相変わらずWindows XPを使っている人も多い。

 Windows XPは2014年4月8日にサポートが終了する。2年後にサポートが終了することを考えると、まだWindows XPを使っている法人のユーザーにとっては、今こそ移行を考えるいいタイミングだ。

 法人ユーザーがで新しいOSに移行するには、最低2年かかるという調査結果がある。法人の顧客はWindows XPからWindows 7に早く移行してもらいたい。日本マイクロソフトからも、ユーザー各社にサポート切れの予定を通知する手紙を出している。

Windows XPが多数残っている状況では、2年後のサポート終了までに完全に移行するのは難しいのでは?

 最初に言っておくが、Windows XPのサポートが延長されることはない(笑)。マイクロソフトは独自のサポートポリシーをもっていて、2014年までの12年間のサポートというのは、かなり長いものと思っている。

 これまでにWindows XPは5億2500万ライセンスも販売している。もしかするとこれらのユーザーの中には、サポート終了時点で移行できていない人もいるかもしれない。

 だが、ダイムラーや米大手通信会社のスプリントをはじめ、世界全体で見ると企業ユーザーの90%がWindows 7に移行済み、または移行中である。

Windows 7で動かないカスタムアプリを使っているユーザーもいる。

 米国でも、そうしたユーザーはいる。そのようなユーザーのために、マイクロソフトではMDOP(Microsoft Desktop Optimization Pack)の技術を買った。デスクトップの仮想化技術により互換性の問題を解決するMED-V(Microsoft Enterprise Desktop Virtualization)もある。アプリケーションの互換性のためにアプリケーション仮想化もある。

 すでに、ITプロフェッショナル向けに移行に関する技術情報を数多く提供している。ツールキットのMDT(Microsoft Deployment Toolkit)も移行のために使える。

Windows 7に移行することによるユーザーにとってのメリットは?

 Windows 7はOfficeなど他のソフトと相乗効果で柔軟性の高いソリューションを提供できる。エンドユーザーが家でも移動中でも、どんなデバイスからでも、セキュリティに守られた環境で仕事ができる。

 具体的には、Direct Accessによる遠隔アクセスやBitLockerによる暗号化の機能などがそうだ。エンタープライズの顧客にはMDOPによるユーザー環境の管理も可能になる。

 Windows 7は仮想デスクトップやターミナルサービスなど、あらゆるソリューションを提供できる。もちろんモバイルユーザーでも使えるし、どんなユーザーにも対応している。エンドユーザーには最適なソリューションを導入してもらうように勧めている。

 特に大企業のユーザーは複数のソリューションを組み合わせて導入することになるだろう。マイクロソフトとしては、それらのユーザーが必要な個々のソリューションに使えるようにしていくのが仕事である。

 革新は止まることはなく、ますます加速していくだろう。マイクロソフトとしては、Windows 7でユーザーに最新の技術を使った最適なワークスタイルを提供していく。多くの顧客は、こうしたWindows 7のメリットを理解してくれて移行を進めてくれている。

Windows 8の提供を控えているが?

 マイクロソフトしては、まず今確実に提供できるWindows 7のOSとしての価値をきちんと理解してもらいたい。OSの移行に最低限2年かかることを考えると、Windows 8の登場を待たずにWindows 7の移行を進めてもらいたい。Windows 7はWindows 8の通過点としても有効だ。Windows 7に移行すれば、その資産をすべて将来のWindows 8に簡単に引き継げる。