アジャイル開発を実践して「納品のないサービス型の受託開発」というユニークなSI事業を展開するソニックガーデン。アジャイル開発については、2011年末ぐらいから大手のITベンダーも本腰を入れて取り組みつつあるようだ。ソニックガーデンで社長を務める倉貫義人氏に、アジャイル開発の意義とどのようなシステムに向くかを聞いた。

(聞き手は田島篤=ITpro

活性化しているようにみえるアジャイル開発(関連記事1関連記事2)の現状をどのように捉えているのか。

倉貫 義人氏
倉貫 義人氏

 確かに最近、SIerによるアジャイル開発の取り組みをよく聞く。ユーザー企業においても、基幹システムに適用するなどの事例があるようだ。

 アジャイル開発が話題に上ることが増えているものの、そもそも何を解決するものなのかわかって話している人が少なすぎると感じている。バズワード化しているアジャイルに経営者が注目してシステム部門に投げ、やってみようとなるケースもあるようだ。こうしたケースでは、「解決策から問題を考える」というように、思考の順番が逆転しているのではないか。

 本来であれば、「問題があって、その解決策は何か」と考えるべきだ。そうではなく、「アジャイルありき」の風潮になっているのではないかと危惧している。

アジャイル開発が注目されているのは、迅速に、かつ、安価にシステムを構築したいからではないのか。

 確かに「速く、安く」開発する目的で、アジャイルに注目する人もいる。システム開発で納期が短縮され、コスト削減も求められている場合が多いからだ。しかし、「速く、安く」がアジャイル開発なのかというと、それは大きな疑問だ。アジャイル開発を提唱している人たちは、そのようには言っていない。「アジャイルソフトウエア開発宣言」をまとめた人たちは、「速く、安く」とは主張していない。

では、アジャイル開発は何を解決するものなのか。

 答えが見えていないもの、言い換えれば、要件が変化していくシステムの解決策になる。ビジネス環境の変化に対応するためには、当初の想定とは異なる機能がシステムに求められる。このように、「変化する要件に対応できる、成長可能なシステム作り」という課題を解決するのが、アジャイル開発だ。

今のアジャイルには二つの意味があると。

 アジャイルをわかっている人たち、以前からアジャイルに取り組んでいる人たちは、「変化するニーズに対応できる、高付加価値のシステムを開発するための解決策」としてアジャイル開発を捉えている。

 一方、最近のアジャイルという言葉の使い方をみると、速く、安く、システムを開発するための手段として捉えている場合が多い。

 個人的には、二つの意味でアジャイルという言葉が使われているのは気持ちが悪い。言葉は生き物なので、速くて安いという意味でアジャイルが使われるようになるのは仕方がない。そうなるなら、本来の意味を指す言葉はアジャイルでなくてもいいかなと思う。