ビッグデータブームに火を付けたオープンソースの分散バッチ処理ソフト、Apache Hadoop。そのHadoopのディストリビューション(関連コンポーネントや管理ツール、導入ユーティリティーなどを同梱したもの)である「Cloudera's Distribution Including Apache Hadoop(CDH)」を提供する米クラウデラが2012年4月26日、日本法人「Cloudera株式会社」を設立した(関連記事)。日本法人の初代社長となったジュセッペ 小林氏に、抱負や今後の戦略を聞いた。

(聞き手は井上健太郎/田島篤=ITpro


就任の経緯は。

写真●米クラウデラ初の海外法人、「Cloudera株式会社」代表取締役 社長のジュセッペ 小林氏
写真1●米クラウデラ初の海外法人、「Cloudera株式会社」代表取締役 社長のジュセッペ 小林氏
[画像のクリックで拡大表示]

 私は今回の就任までに14社の社長を務め、30余年にわたってほぼ2週間おきに日本と米国を往復する生活を続けてきた。「日本法人立ち上げのプロ」を自認している。これまでは日本ブロードビジョン、アークサイトの社長などを務めた。日本法人立ち上げ時の就任が主だが、立て直しを頼まれて引き受けたこともある。

 海外ベンダーは、日本のIT商談の複雑さを理解しておらず、システムインテグレータ(SIer)を流通業者のように捉えがちだが、実情は違う。顧客企業の複数の階層と関係を築かないと売れないし、SIerがチャネルというよりも顧客寄りの立場であることが珍しくない。しかも、顧客企業の技術理解力がそう高くないので、SIerの用途提案力など営業手腕にかなり依存することになる。

 こうした実情が分からないまま「日本市場は大きいし、先端技術を採用してくれる」と漠然と期待して日本法人を立ち上げてしまい、思うように販売が伸びない、という悩みを抱えてしまう海外ベンダーは今も少なくない。「日本の顧客企業は購入プロセスが明確でない」「技術サポートをしっかりしないといけない」といった事情は、説明しても分かってくれない本社も多いので、それを理解してくれる海外ベンダーの日本法人だけ社長を引き受けてきた。

 クラウデラの場合は、技術サポートを求めてきたNTTデータとの提携から日本市場へのアプローチが始まっている(関連記事1関連記事2)。その件でマイク・オルソンCEO(最高経営責任者)から相談を受けたので、「NTTデータはパートナーとして有力な企業だ」と私も賛成して手伝うようになった。

 クラウデラにとってこの日本法人は、初の海外現地法人だ。今後は欧州などにも拠点を展開していくと思うが、日本が先行できたのは、大手SIerであるNTTデータと提携していたことが大きい。

今回、新日鉄ソリューションズ(NSSOL)とも提携を発表しているが、NTTデータとはどんな役割分担になるのか。

 NTTデータはもともとオープンソースソフトウエア(OSS)に強いし、テレコム系と官公庁系ユーザーに強い。

 一方、NSSOLは民間企業市場でNTTデータが手薄な分野に強みを持つ。BI(意思決定支援)やDWH(データウエアハウス)関連のソリューションに長年取り組んでいるし、金融系でNSフィナンシャルマネジメントコンサルティングという子会社も持っている。しかも、日本オラクルや日本IBMといったクラウデラにとっても大事なパートナーとの関係も深い。

 我々は日本の市場については、このように見ている。Hadoopのユーザーが最も多いのはネット企業だが、彼らは自社の技術者たちで使いこなしてしまうので、我々の有償サービスを必要としない。