新年度に入り、大学生向けの時間割アプリ「すごい時間割」の利用が急拡大している。東日本大震災への世界からのメッセージを集めた「Pray for Japan」の作成者としても知られる鶴田浩之氏が「まずは自分が使いたかった」という、学生の視点で開発されたアプリだ。このアプリの広がりによって「日本の教育が変わる」と期待を口にする鶴田氏に、開発のプロセスや今後の展望を聞いた。さらに、鶴田氏と協力し、大学生向けのソーシャルメディア体験イベント活動を展開するDAIGAKU GRAFFITIのスタッフに、学生へのソーシャルメディアの浸透ぶりや魅力などを聞いた。

(聞き手は、菊池 隆裕=ITpro


「すごい時間割」は、時間割管理ができるだけでなく、授業や空き時間が共通する友人が分かるなどのソーシャル機能を備えたアプリです(写真1~4)。2012年3月末までに2万人のユーザーがいると聞いています。このアプリは、いつ、どのようにして思い付いたのでしょうか?

学生向け活動「DAIGAKU GRAFFITI」の関係者 左から、鈴木悟氏(KDDIサービス企画本部 マルチアクセス&サービス企画部)、泉愛氏(DAIGAKU GRAFFITI運営事務局)、伊澤諒太氏(DAIGAKU GRAFFITI運営事務局)、鶴田 浩之氏(Labit代表取締役)、 中嶋 奈津子氏(KDDI新規ビジネス推進本部 オープンプラットフォームビジネス部)
学生向け活動「DAIGAKU GRAFFITI」の関係者 左から、鈴木悟氏(KDDIサービス企画本部 マルチアクセス&サービス企画部)、泉愛氏(DAIGAKU GRAFFITI運営事務局)、伊澤諒太氏(DAIGAKU GRAFFITI運営事務局)、鶴田 浩之氏(Labit代表取締役)、 中嶋 奈津子氏(KDDI新規ビジネス推進本部 オープンプラットフォームビジネス部)

鶴田氏:2年前から受託で開発をしていたのですが、2011年1月くらいに法人化するタイミングで、先行投資型で世の中を変えるプロダクトを作ろうと考えました。

 そのときのアイデアの一つが、この「すごい時間割」でした。時間割アプリはたくさんありましたが、自分自身が使いやすいと思えるものがなかったからです。「次の授業は何か」「教室はどこ」という基本機能が使いやすくて、なおかつ、ユーザー同士がネットワークでつながっていると面白いと思って作ることにしました。

 当初は自分の通っていた大学(慶應義塾大学)内で使えるものを考えていたのですが、同じ会社のメンバーに話したところ、やるなら日本全国、世界中で使えるものを、ということになりました。これが3月中旬くらいです。

 そこから開発を始め、6月のある日の深夜2時にプレ公開したところ、すぐに1500くらい登録がありました。Tweetしただけでこの反響だったので、準備をすればもっといけるんじゃないかと考えました。

写真1●すごい時間割のメニュー画面
写真1●すごい時間割のメニュー画面
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写真2●自分自身の時間割を見やすく表示する
写真2●自分自身の時間割を見やすく表示する
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Tweetだけで1500人が利用し始めたというのは、大きな反響だと思うのですが、何が要因だと思われますか?

鶴田氏:一つはタイミングです。皆がFacebookのアカウントを持って個人がつながり始めた時期でした。加えて、スマートフォンからのネットの利用も大学生の間で急速に広がりました。

 もう一つは、時間割という身近な管理ツールに目を付けたことです。大学生向けのソーシャルメディアは他にもありますが、続けるモチベーションがないものが多いと感じます。時間割という、毎日見るものを選んだのが大きかったのだと思います。

写真3●授業ごとの履修者が分かる
写真3●授業ごとの履修者が分かる
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写真4●空きコマ・授業中の友人を一覧できる
写真4●空きコマ・授業中の友人を一覧できる
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 時間割アプリは他にもありましたが、学生が作るアプリには完成度が高くないものが多いので、広がらずに終わってしまうものが多いように感じます。自分たちは、開発経験があるエンジニアやデザイナーをそろえて開発しているので、他との差別化ができたのでしょう。