オフィス用品のネット通販事業などで成長を続けるアスクル。今や商材は研究所や工場で利用する間接材全般に及び、顧客も大手企業から個人にまで広がった。さらに「アジアを起点に、グローバル企業になる」として、中国・上海でもビジネスを手がける。EC(電子商取引)の成功事例として注目を集めてきたアスクルはどこへ向かうのか。岩田彰一郎社長に聞いた。
事業拡大に伴い顧客や商材が多様化していますが、まず事業戦略を話してください。

我々は10年、20年単位で大きな時代の変化を見て、それに基づいて事業戦略を立てています。2005年ごろから、次のアスクルをつくっていくために、五つの変化を想定しました。
一つめは、デジタル技術の変化です。地デジ対応が一通り完了する2011年を一つのゴールに設定しました。今では使わない言葉ですが、「ユビキタス」社会が実現するだろうと考えました。
二つめは、大企業はコア事業に集中して、ノンコア事業を外注化する方向に進むということです。三つめが、顧客主導型社会の時代が来ること。Facebookのようなソーシャルメディアがまだ無いころでしたが、マスメディア、マスセールス主導から、コミュニティーなどを通じて顧客主導に変わるとみました。
圧倒的なアジアの成長が四つめの想定です。実際に中国がGDP(国内総生産)で日本を抜きました。最後が循環型社会の到来。持続的に成長するためにも、エコを実現していかなければなりません。この五つの想定を原型に戦略展開を図ってきました。
売り上げの68%をネットで
具体的にはどのようなことに取り組んだのですか。
顧客との主な接点を紙のカタログから、個々の顧客の特性に合ったネット媒体に変えました。顧客との関係を「均一」から「個」に変え、それぞれの顧客との関係を強化しようとしたのです。具体的には大企業から個人まで、それぞれのニーズに合ったサイト、サービスをつくってきました。
例えば大企業、中堅企業向けの間接材購買サービスにSOLOELやSOLOEL ARENAがあります。このうち、SOLOEL ARENAはワンストップで管理購買できる汎用のソリューションです。大手を対象にしたSOLOELになりますと、個々の顧客の購買を代行する仕組みを提供するという形で、より顧客のなかに入り込んだサービスとして実現しています。
我々の従来のビジネスモデルは、紙のカタログに掲載した商品を6カ月間、定番として価格を維持し、かつ全ての在庫を持つことで「明日、届く」「今日、届く」を実現するものでした。しかし、紙のカタログはこれ以上、厚くすることはできませんし、物流センターをどこまで増やすのかという問題もあります。
今では売り上げの68%までネット比率が高まっていますので、そうした物理的な制約を、ITを駆使することで超えられるのではないかと考えています。付加価値の創造を主にネット上で行うようになるという意味で、我々は「Eラインを超える」と表現しています。今まさに新たなチャレンジを始めたところです。
そのためのインフラとして、2010年に新たな基幹システムを稼働させました。従来はAS/400をベースにしたものでしたが、サービスの進化に対応できなくなっていました。そこでSAPのERPをベースにしたシステムに入れ替えるとともに、商品点数の急増に対応できるように商品データベースも刷新しました。
そうした事業戦略を推進するうえでの課題は何ですか。
「現地、現物、現場力」と言っているのですが、ネットの仕組みで変えることとリアルにビジネスを変えることがリンクしないとうまく行きません。Eラインを超えると言ったところで、やはりリアルな価値が無いといけません。配送なども含めた価値創造に注力する必要があるわけです。
いわゆるロングテール商品も増やしていますが、これらはアスクルで在庫として持ちませんので、現状では納期が見えません。だからと言って、納期は分かりませんではダメなので、納期を保証できるように物流面で努力することが必要です。結局のところ、リアルな壁も乗り越えないと、顧客にとっての真の価値をつくることにはならないと思っています。