マイクロソフトがクライアント向けの新OS「Windows 8」と並行して開発を進めているサーバーOS「Windows Server 8(開発コード名)」。このWindows Server 8では、仮想化機能の「Hyper-V」が現在の2.0から新しい“第3世代”にバージョンアップし、Hyper-Vの特徴である簡単な操作を維持したまま、中堅・中小企業のニーズに合致するより高度な機能が使えるようになるという(参考記事)。その概要について、日本マイクロソフトのWindows Server製品担当者に話を聞いた。
Windows Server 8で搭載する新しい「Hyper-V」のポイントは?
岡本:大きく三つある。仮想化としてのベースライン機能の強化、新機能「Hyper-V Replica」、ライブマイグレーション機能の拡張--だ。
ベースラインの強化とは、どのようなものなのか。
岡本:まず仮想化の基本機能としてスケーラビリティを向上させる(図1)。いろんなサービスについて、仮想化の環境でも十分なパワーでホスティングできるようにするためのものだ。
まず、現在のベータ版の時点で、ハードウエア上の論理プロセッサ数が、Windows Server 2008 R2で提供しているHyper-V 2.0の64から160と2.5倍に増えている。サーバー1台当たりで同時に動作する仮想マシン(VM)の数も384から1024と大きく増える。
さらに、VM当たりの仮想プロセッサについては最大4から最大32と8倍に増える。同様に、ホスト当たりの仮想プロセッサは512から1024と2倍に、VM当たりのメモリー量も64Gバイトから1Tバイトと16倍に、取り扱えるホストの物理メモリーの容量も1Tバイトから2Tバイトと2倍に増えている。
これらを組み合わせてクラスタリングした場合もスケールアップとスケールアウトの両面で4倍になっている。これまでは1クラスタ当たり16ノードだったものを64ノードまで拡張し、その中で4000個のVMまでホスティングできる。これにより大きなホスティングもできるようになってきた。
そうした強化は、具体的にどのようにユーザーのシステムに影響してくるのか。
これにより、これまでは不安視されることもあったプロセッサのパワーが必要な作業についてメリットが大きい。余裕を持って扱える。具体的には、SQL ServerやExchange Serverを使うワークロードの高い作業がある業務でも、VM当たりのプロセッサ数が最大32まで使えるようになるので余裕を持って扱える。
もちろん、1台のハードウエアに対する集約率を上げることも可能になる。例えば、マルチテナントでサービスを提供しようとすると、ホスティングする各社のサーバーの集約率をいかに上げていくかが重要になる。また、仮想マシンの台数が拡張されることは、仮想デスクトップであるVDI(Virtual Desktop Infrastructure)のシナリオでサポートできるクライアント数が増えることにもつながる。
Windows Server 8は今後数年間にわたって提供していくサーバーOSだ。現在は少し多めに思うかもしれないが、これが普通の数字になるかもしれない。そうした時代の変化に備えて、OSとして管理テーブルを最適化しておくことが重要だ。
2番目の「Hyper-V Replica」という新機能は、どのようなものか。
Hyper-V Replicaは、仮想マシンのレプリカを、ほかのサーバー上に作成するというものだ。仮想化の仕組みを使うメリットの一つは、物理的な構成を仮想的な構成を切り離せること。このメリットを活用し、大震災以降にニーズが高まったBCP(事業継続計画)のためのディザスタリカバリー機能として利用できる。
BCP向けの機能をOSの中に取り込んだのが大きな特徴だ。Hyper-V Replicaを利用するには、バックアップ元とバックアップ先の両方でWindows Server 8のHyper-Vが動いていればよい。動作しているハードウエアが違うものであっても構わない。どのサーバーにレプリケーションするかは、Hyper Vマネージャの中からウィザードを使って簡単に設定できる。
単純にスタンバイだけの状態で、ムダに置いておく必要はない。バックアップのサーバーを本番運用して通常は両方のサーバーを使いながら、障害が発生したときには残ったサーバーで運用を続けるように縮退運転させるという使い方もできる。